必須元素別の理解

元素別コントールの優先順位

■肥料分のバランス

 

肥料分の...植物の栄養分のバランスについてはリービッヒの最小律が有名ですよね。

「最も足りない肥料分が植物の成長を制限する」みたいな話です。
足りているものをいくら足しても植物は成長しない。
足りていないものを足さないとダメってことですね。

これは現在では、必ずしもそうとばかりは言えないという部分もわかってきていますけど、それでも概ね正しいと言えます。

 

それと、肥料分相互の関係についての理解も重要です。

例えば、相性が悪いものとして、陰イオンのリン酸と陽イオンのカルシウムを同時に添加すると、結びついてリン酸カルシウムとなって不溶化してしまいます。
水草水槽の肥料としては最も基本的なカリウムを添加していくとpHが上昇して鉄の吸収が阻害されたりします。またカリウムの過剰添加は、これと拮抗するカルシウムやマグネシウムの吸収阻害に繋がり、頂芽の縮れなどのカルシウム不足症状を招いたりもします。

 

また時間軸の関係性も重要で、水草が「食い溜め」できる栄養分と出来ない栄養分があります。
主要な栄養分の殆どは食い溜めができる...つまり、水中の養分がかなり減っても、それまで食い溜めした分で大丈夫だったりしますし、必要があれば旧葉部から、より必要性が高い成長点に養分を送ったりすることもできます。...なので大抵の養分不足は旧葉部から現れます。
ですが、カルシウムなどは必要な時に必要なだけ取り入れる必要があるので、必要最低限は環境中に吸収可能なかたちで存在しないと、即座に発根が悪くなる・新芽が出にくくなる・頂芽が縮れるといった症状につながっていきます。


必須元素は、植物の要求量の違いで、多量必須元素・中量必須元素・微量必須元素と分けることがありますよね。

多量〜中量必須元素は、主に植物体自体をつくることに関係しているから要求量が多いわけです。

これに対して鉄以下の微量必須元素は、酵素...化学反応に関わっているものが多いんです。

多量〜中量必須元素は、(先の拮抗作用のことやpHの変動などといったことを除けば)水草の必要量よりもかなり多めに施肥することが決定的な大きな問題になることは少ないと言えますけど、

微量必須元素の場合は、それが足りないと生育に大きな影響を与える...問題を引き起こすのだけど、ちょっと多すぎると明確に「毒」になるというものが殆どだと言えます。

「微量で良い」のではなくて、「微量じゃなきゃダメ」なんです。

 

施肥について考える時は、単純に肥料が足りないから足そう!というだけでなくて、こういったバランスについてイメージしておくことが重要です。

 

■症状の見極め方

 

例えば、旧葉部が傷みやすい...黄色くなったりしがち...なんていう症状は、窒素、リン、カリウム、マグネシウム、マンガン...などの欠乏症で出てくることがあります。

では、実際どの要素が関係しているのか?を見極めていくには、総合的な判断が必要になります。

  • 水草の種類によって要素の要求度が違うので、どの水草がどのくらい欠乏・過剰症状を起こしているのかを見て判断する。
    例えばパールグラス系は比較的マグネシウム欠乏が出やすいなど。
  • pHによって、要素別の吸収のし易さが変わるので、pH・pHの変化傾向と症状の進行を照らしあわせて判断する。
    例えば、pHが高めだと鉄の欠乏症状は出やすいが、低めだと出にくい。
  • 塩基バランス...カリウム、カルシウム、マグネシウムのバランスを意識する。GHが高めであればカリウムはそれだけ多めに必要になるし、そうでなければ少なめにするか、カルシウム・マグネシウムを添加していかいないとバランスを崩し、いずれかの要素の欠乏・過剰症につながる。
  • 長期的に維持している場合は、微量元素の欠乏の可能性も検討してみる。
  • 先の例のような旧葉部の痛みとして出てくる症状でも、根より葉面吸収が重要な水草の場合は、実は問題は根張りであるということもあり得るので、根張りに関連する要素の可能性も検討してみる。
  • ...

もしも、葉は窒素で出来ていて、根はカリウムで出来ていて...なんて感じで単純なら、症状から不足している要素を簡単に見極められるわけですが、当然ながらそんなことはなくて、大雑把に部位を捉えるなら全ての要素は全ての部位に関わっているわけです。

ただ要素によって過不足の影響が出やすい部位があるっていうだけで。

なので、症状→何が不足と単純に覚えないで、様々な角度から過不足要素を想像できるように、出来るだけ必須元素別の機能や水質との関係などを総合的にみられるようにしていきましょう。


■植物の主要な必須元素

 

 窒素(N)

アンモニウム(NH4+)、硝酸(NO3-)などの形で吸収する。一部の...根張りの良い水草の多くは硝酸態窒素を上手く利用できない(ex.クリプトコリネの仲間など)かアンモニウムを優先的に利用する。

アミノ酸などを生成するための材料。
C,O,Hなどを除いた所謂肥料として使われる元素の中では植物が最も多量に必要とする元素。

アンモニアはアルカリ、硝酸は酸性。
アンモニアは毒性が強いが、酸性よりの水中では比較的毒性が弱いアンモニウム(NH4+)となる割合が増える。

肥料添加を除けば水槽中では、枯葉などの生物遺骸や糞、魚のエラからのアンモニア排出などによって供給される。
園芸や農業関係では、葉を大きくするという形で効能が出やすいので葉肥と呼ばれることもある。

最終的には硝化バクテリアがNO3:硝酸塩にまですることで水中に出てくるので、換水で排出することができる

アンモニウムはソイルの陽イオン交換効果でソイルに吸着・保持されやすい。

不足すると

  • 成長点の葉が小さくなる。
    全体に草姿が貧弱になる。
  • 根本の方から茎や葉が黄色くなってくる。枯れ上がる。

過剰だと

  • コケの原因になる。特に緑藻が出てくる。
  • 草体が大きく且つ軟弱(病弱)になる。
 → アクアフローラの使い方NP系液肥の底床注射
 

リン(P)

ATPの材料、DNAの材料など。

代謝活動に深く関わる。
成長が激しい水草、グロッソなどランナーを盛んに伸ばす水草は比較的必要量が多い。
水草一番サンドがグロッソを強力に・ソイルに潜り込ませるかのように這わせランナーの出がひときわ良いのは、熔リン酸が添加されているせいではないだろうか?
発芽、新芽の形成などに深く関わり極めて重要なので、窒素、カリウムと共に3大栄養素として扱われているが、植物体全体での必要量は窒素やカリウムに比べるとかなり少ない。

ネットをうろうろ見て回っていると、水草が使う窒素とリンの割合は、2:1のように書かれているところも多いが、自然の湖沼にはえている水草に含まれる窒素・リンの重量比は10:1程度のことが多い。水槽に入れる水草の多くが「水中生活も可能な湿地植物」であり根も良く発達させることが多いことなどから、もう少しはリンの消費量が大きい可能性もあるが、それにしても花も実も付けない(付けさせない)水槽での水草のリンの消費量は窒素に対してかなり少なめだと考えるべき。

これが何を意味しているかというと、多くのエサの窒素・リン比と照らしあわせてみれば、窒素肥料分などを完全にエサに頼ってしまうと、いずれは必ず水槽内がリン過剰になってしまうということ。たまに底砂の丸洗いでもすれば別だけど...ソイルじゃできないですね。

リン酸は、酸性。

肥料添加を除くと、フレークエサからの溶出、糞や生物遺骸からの溶出によって供給される。

園芸や農業関係では、花や実をつくるという形で効能が出やすいので実肥と呼ばれることもある。...故に園芸用の肥料は比較的リンを多く含むことが多い。

リン酸は、カルシウムと結びついて不溶化しやすい(KHの低下)。リン酸カルシウムは、ソイルに吸着され水草が利用できる。
また鉄とも結びついてリン酸鉄となり不溶化する。リン酸鉄は水草が養分として利用できないだけでなく毒性が強く葉や根を溶かす。ソイルも新しい時は良くリン酸を吸着する。またソイル中のアルミニウムもリン酸と結びついてこれを不溶化する。リン酸アルミニウムも水草は利用できない。
つまり、リン酸は水換えによって排出しにくい

定期換水をしていても長期的に水槽のpHを必要以上に下げてしまう主要な原因になる。

基本的には、リンの供給は魚のエサだけで充分で、肥料として積極的に入れるべきではないと考えておくべき。
...魚が(給餌量が)少なく水草が多い場合は不足することもあるが。

不足すると

  • 新芽やランナーが出にくくなる
  • 這う水草が這いにくくなる。
  • 成長点が委縮する。
  • 根の成長が悪くなる。
  • 旧葉部の黄化。

過剰だと

  • 様々なコケが出る。特に黒ヒゲ
  • pHの低下。
リンについては、ページの最後にもうちょっと書き加えておきます。...水槽管理とは特に関係無い話ですけど。
 

カリウム(K)

浸透圧調整、栄養素の植物内の移動、光合成などに関わる。
植物体は、窒素に次いでカリウムを多量に必要とする。

主要3元素(NPK)の中では、最も水に溶け出しやすく...例えば葉が枯れるとスグに流出する...、水換えによって失われやすい。

またカリウムはエサによる供給は殆ど無く、水草が消費しトリミングで排出されると、ひたすら失われていくことになるので、肥料添加はほぼ確実に必要になる。

カリウム肥料の多くはアルカリ。

園芸や農業関係では、根を強く健康にするという形で効能が出やすいので根肥と呼ばれることもある。

とにかく溶け出しやすく水換えで容易に失われていく

不足すると

  • 症状は旧葉部から現れる。
    ...全体としてKが不足すると体内からかき集めて頂芽に優先的に回される。
    旧葉部が白っぽくなる
    全体的に白くなるというより縁の方から白くなっていき、窒素不足などが原因のものと比べて早く葉が壊死していくのも特徴。壊死したところが黒い虫食い穴のようになることも。カリ不足
  • 茎や葉脈などが赤っぽくなる。(本来、そうならない種類の水草で)
  • 葉がうねる。縮れる。
  • 根腐れが起きやすくなる。

過剰だと

  • 直接的には目立った問題は起きない。
  • 但し、Mg, Ca, Feなどの吸収阻害を起こし、それらの欠乏症を招く。特にカリウムの過剰添加がカルシウム・マグネシウム不足につながることには要注意
    これらの不足が結果的に、代謝率の低下:窒素・リンが余るということに繋がることもある。
  • 結果的にロタラのような成長力がある水草の頂芽が萎縮・縮れるといった症状につながることも多い。
  • pHの上昇

イニシャルスティックの使い方カリウム液肥の使い方

 

カルシウム(Ca)

人間がカルシウムの骨で体を支えているように、植物でも細胞と細胞をつなぎとめる構造部分に必須。
這う・立つなど草姿などを決定する光のセンサー機能、炭水化物の移動...などにも関わる。

新芽づくりや発根とも関係が深く、カルシウム不足だと根腐れを起こしやすくなる。

炭酸と結びつきやすいが、リン酸などがあるとこれと結びついて不溶化し、水中から失われる。

肥料添加を除くと、供給は、水道水(水換え)、底床内の石灰分(貝殻や石)、エサなどによる。
植物は他の主要な養分をある程度は「食いだめ」できる・必要があれば古い組織から新しい組織へ移動して使い回しできるのに対して、カルシウムは常に必要な時に必要なだけ吸収する必要があり、常に環境中に余裕を持った量が存在する必要がある
但し、水草はカルシウム過剰を嫌うものが多いので、過剰にも注意。適切なバランスが必要になる。

カルシウム肥料(石灰)の多くはアルカリ。

不足すると

  • 最初に根が弱り、根腐れが起きやすくなる。発根しにくくなる
  • 成長点が白っぽくなる委縮する
  • 新芽が出来にくくなる。新芽の成長力が弱くなる。
  • GHの低下

過剰だと

  • 目立った問題は起きない。
  • 但し、K, Mg, Feなどの吸収阻害を起こし、それらの欠乏症を招く。
  • pH, GHの上昇。

CaMg液肥

 

マグネシウム(Mg)

葉緑体の材料。葉の緑色はMgが作っている。リン酸の吸収や植物体内での移動にも関わる。

炭酸と結びつきやすい。その他カルシウムと振る舞いが似ている。
肥料添加を除くと、供給は、水道水(水換え)、底床内の石、エサなどによる。
マグネシウム肥料(苦土)の多くはアルカリ。

カリウム肥料の過剰添加がマグネシウム不足につながることが多い。

不足すると

  • 旧葉部から症状が見られはじめる。
    葉脈の緑を残して葉が黄色くなる

    ...MgはKのように、足りない場合は植物体内で成長を止めた部位から成長点へ優先的に回される。
  • GHの低下
  • リンの吸収効率・利用効率が落ちる。全体的に代謝が落ちて窒素吸収力も落ちることがある。

過剰だと

  • 目立った問題は起きない。
  • 但し、K, Ca, Feなどの吸収阻害を起こし、それらの欠乏症を招く。
  • pH, GHの上昇。
 →CaMg液肥

 

硫黄(S)

硫黄は、多量必須元素(あるいは中量と呼ぶこともある)だが、ソイルを使っている場合に不足することはほぼないので肥料として意識することは殆ど必要ない。
底床内が嫌気化すると硫酸還元菌の活動で猛毒の硫化水素を発生させる原因になる。

底床中に鉄分が豊富にあると優先的に硫化鉄がつくられるので硫化水素発生の予防になる。

不足すると

  • アミノ酸やタンパク質がの生成が滞るので、窒素不足と似た症状を示す。黄化や成長抑制。
  • アントシアニンが蓄積し、紫色が葉に入るようになることがある。

過剰だと

  • 水草に直接的な影響は殆ど無いが、水中に硫酸イオンが過剰だと、鉄と結びついてしまい間接的に鉄分の吸収に影響が出ることがある。

 

以下 微量元素

 

微量元素の不足は、例えば炭酸カリウムだけを施肥しているといった単純な施肥を長期的に行っていくと出やすくなります

微量元素も適切に含まれた水草専用の液肥を使っている場合は殆ど不足することはないはずです。

 

鉄(Fe)

鉄は、アクアリウムでは非常に重要視されますね。たしかに葉緑素の形成に関わったり、酸素運搬に...代謝活動に深く関わっている非常に重要な元素ですが、正直ちょっと重要視されすぎているのではないか?と思います。

もちろん決定的に足りなければ水草は枯れちゃうのですけどね。

これソイルを使うようになる以前の・それも欧州発のやり方の影響が大きいのではないかと思っています。

ソイルにはけっこう鉄分が含まれていて、最初から鉄分不足になったりはしないはずなんですよ。

ネット上を見ていると過剰な添加をしているようにしか見えない例がけっこう出ているので、そっちの方が心配です。水稲栽培などでは鉄不足も問題になりますが、鉄過剰の方がより大きな・深刻な問題として扱われます。

多くの水草用の総合肥料にはバランス良く含まれています。

二価鉄じゃないと!なんていう理解も浸透しちゃってますが、確かに植物が直接吸収できるのは二価鉄ですけど、植物は自ら出す根酸(クエン酸)によって土壌の鉄分を吸収できるかたちて必要なだけじっくり吸収していきます。但し、土壌が(水質が)アルカリに偏っていると上手く吸収できずに鉄不足症状が出てしまったりしますけど。

不足すると

  • 頂芽あたりから黄化・白化が起きる。
    水草によっては色が抜けて透き通ったような感じになっていって枯れてしまう。

過剰だと

  • リン酸と結びついてリン酸鉄となり、これが葉や根につくことで、葉や根を溶かしていく。リン酸鉄は植物にとってはかなり毒
  • リン酸鉄の形でリンの固定化が進むことでリン不足になる。
  • カリの吸収阻害を起こす。モリブデンの吸収阻害なども起こす。

マンガン(Mn)

欧州発の文献だと鉄と同じくマンガンを重視しているものもかなりみられます。
これも大抵の水草の総合肥料ってのにはちゃんとしたバランスで入っていますけど。

光合成に深く関与していて葉緑体中に多くが含まれます。

アルカリだと比較的欠乏症が出やすくなる。

不足すると

  • 鉄不足とよく似た症状...黄化・白化を起こす。ただし頂芽というよりも成葉や下葉に出やすい。

その他

亜鉛モリブデンホウ素(ボロン)塩素が必須元素。

ナトリウム、珪素(シリコン)、アルミニウム、セレン、コバルトなどを必要とする植物もある。
例えば、カヤツリグサ科の植物は珪素を取り入れている代表例のように言われることもあるので、カヤツリグサ科のヘアーグラスにとっては珪素も必須元素である可能性もあるのではないかと考えている。

これらは、微量必須元素であって殆ど意識する必要はない。
また多くの水草用の総合肥料(アクアフローラ、イニシャルスティック、フローラプライド...など。園芸用のハイポネックスなども)の場合は、微量元素の不足があり得る主なものは、これらを含有している(らしい)。

これらはどれも無くてはならないけど、少し多すぎてもかなり問題を起こすような適量の範囲が極めて狭いもの。
銅、ホウ素、塩素なんて分かりやすく思いっきり毒ですよね。

園芸用のものはホウ素を重視していたりすることもあるけれど、エビにはかなり強力に効く毒だったりします。

 

以下、肥料分としては扱われないけど必須元素であるもの

 

炭素(C)

光合成によってつくられる炭水化物の材料。
炭素は、水草水槽の場合は、CO2添加という「施肥」に相当することを行って供給している。

炭素供給量が多いと、窒素不足や光合成に関わる元素の不足をある程度は補える。

植物の必須元素として炭水化物をつくるための炭素も重要だが、底床中の炭素分(炭水化物)も有機栄養バクテリアや真菌類、その他底生微生物による枯葉や残餌などの生分解活動を支えるという点で、植物の栄養吸収に間接的にかかわる。底床中の炭素分が少ないとこれらの分解者の活動が制限されてしまう。

 

 水素(H)・酸素(O)

水素・酸素は水を直接吸収したりして得るので、殆ど全く意識する必要はない。

呼吸用の酸素はほんの少しは意識することもなくはないけれど。もっともそれも水草水槽の場合は殆が光合成による副産物として自ら生産しているとも言える。

 

植物にとって毒となる元素

カドミウム、ヒ素、鉛、水銀、ニッケル... ...

水草を束ねて沈める鉛巻きとかどうなんでしょうね〜。
溶け出さなきゃ問題はないわけですけど、水槽中でそこそこ強い酸を使うことはありますし...木酢液とかエクスタミンとか...、根が触れていれば根酸で溶け出すこともありますよね。

繰り返しますけど、微量元素の多くは過剰であること=明快に水草にとって(ほかの生き物にとっても)毒であるものが多いです。

 

■水槽内で意識すべき優先順位
 (コントロールの難しさ度合い)

 

硝化サイクルが完成していない立ち上げ期を除くと、
過剰状態を意識すべき優先順位は、

1.リン

2.窒素

3.カリウム

4.カルシウム

であると考える。

リンは、ソイルに吸着されたり、ミネラルと反応して沈降したりして蓄積していき、これらを水換えなどで取り除くことが難しくなる。

水換えでの排出の難しさから、長期的にはもっとも蓄積を警戒する必要がある。

また、水の酸性化、あるいは底床の嫌気化が原因で溶出してくることもある。

従って、最少律を意識するなら、常にリンが水草によって使い切られる肥料バランス・生育環境にしておくことが重要。(やたら、排除すべきということではない。あくまでも充分に使わせつつ、使い切らせるということを意識する必要があるということ)

特にフレークエサを使っていると、窒素:リン=5:1くらいでリンが含まれていると言われているけど、実や花を付けない水草のリンの消費量はかなり少ない*はずで、窒素などを追加で補給してやらないとリンを使い切れないのではないかと想像している。

*:植物全般では、2:1くらいとかってよく言われているけど、水草の含有元素調査とか見ていると、10:1くらい...リンの10倍は窒素が必要だと思われる。

 

カリウムは速やかに水に溶け出すので、水換えで過剰状態を改善することが出来る。枯葉からも真っ先に流出していく。

窒素は、カリウムほどではないが、有機栄養バクテリア・硝化バクテリアがキチンと機能していれば、いずれ硝酸になり、水換えで排出できるようになる。

 

 

逆に、欠乏を意識すべき優先順位は、長期的には上記の逆で、

1.カリウム

2.窒素

3.リン

4.カルシウム

となる。

カリウムは水換えで排出されやすいので当然だが、
窒素も、水草が多く、魚が少ない水草水槽では...特に有茎草中心で、光やCO2などの環境がリッチで、高回転で維持している場合は窒素不足に陥りやすくなる。特に底床内の窒素不足は、初期の底床づくりの内容にもよるが、確実に進んでいく。

緑藻さえも殆ど出ない状態になってしまうことはよくあることだ。
長期維持の場合は、底床の窒素不足対策が大きな課題になる。

水草の成長を維持する、リンの蓄積による黒ヒゲなどの問題を回避するためには、カリウムはもちろん窒素を強く意識して、水草がリンを使い切れるように肥料バランスを取って行きたい。

 

長期的にはリンの蓄積を警戒したいと前述しているが、ソイルがまだ新品でリンを強力に吸着している期間については、エサの投入量などによっては、リン不足が水草の成長の足を引っ張る状態も考えられる。...根張りの良い水草にとっては足元にリンが集められるということだが。

 

 

結局のところ、調整が比較的簡単なカリウムは別にして、リンを使い切らせることも含めて、大量に水草が茂る水槽のライフサイクル全体を眺めれば、カギを握るのは窒素分のコントロールということになる。

それも減らすだけではなく、いかに足すかということが大きな問題になる。

 

リンを増やさず、窒素を足すことの現実的な難しさは、

リンの過剰を無視するなら、給餌を増やせばよいのだが、フレーク餌では極めてすみやかに、生餌でも時間の問題でリンの供給を増やしてしまう。

長期的に供給されるように底床内に腐葉土などをたっぷり仕込めば、立ち上げ期にアンモニアの過剰による多くの弊害、また炭素分によって有機栄養バクテリアが増えすぎて水が白濁するなどといった問題を起こす。...しかし炭素分は腐葉土を分解してくれるバクテリアや底生微生物のためには重要だ。

糖でコーティングされて肥料分の溶出がコントロールされたアクアフローラなどのおこし型の肥料は、ヘアーグラスなどが密生した前景に入れるのは、かなり面倒だし、入れただけソイルを砕いて泥化を進めるし、またスポット的にしか効かない。
園芸用の肥料を使うと、それに含まれるアンモニア態窒素が特にエビなどを殺してしまうことがある。
硝酸態窒素だけの液肥は、殆ど手に入らない。

 

こういった問題があり、これにどう対応するかがポイントになる。

 

基本的には、立ち上げ期の難しさは大きく増してしまうが、ADAのパワーサンドのような腐葉土などを充分に含んだ底床材を使い、少しづつ進む生物分解によって長期的に栄養補給される状態をつくることが前提になると考える。

 

その上で、どうしても必要になった時に窒素の底床への追肥のやり方を検討することになる。

もっともソイルを使っている場合は、ソイルの寿命があるので、ソイルの寿命がつきるころまでは、底床からの栄養補給が出来る状態に最初に作ってしまうのが理想的なのだと思う。

リンについて補足

生命体が必要とする元素は、生命体が生まれたころの原始の海の組成をある程度なぞっていると言われています。

もちろん、入手や化学反応などの使い勝手の良さで選ばれているわけですし、その後の環境変化で選び直されているものもあるわけですけど、大雑把に言えば、環境中に大量に存在する元素の中から選んできたわけです。

但し、必要量に対する環境中の存在量という点で、唯一の例外とも言えるのがリンです。それだけ重要で換えが効かないものってことですね。エネルギー代謝や遺伝の根幹を担うわけですから。
とにかくリンだけは圧倒的に足りないんです。
逆に言うと、リンの量が生物量を決める...制限するとも言えます。

ちなみに肥料の原料で最も高価なのもリンですね。
窒素は空中の窒素を固定して大量生産されているし、カリウムは花崗岩などカリウムを豊富に含んだ原料が豊富にあるけど、リンは基本的にはグアノ(海鳥の糞が蓄積して化石化...岩石化したもの)などの生物活動が関わったものしか効率的にリンを得られる原料は無くて原料枯渇が見えているような状況なんですね。だから高価。
下水からリンを抽出するような技術が普及・低コスト化するなら別でしょうけど。まだまだ技術的には確立していないし。

話を戻して、そんな貴重な・生物量を規定するような存在であるリンが急激に増えると、しばしば生態系の崩壊につながる生物の爆発的な繁殖につながります。
湖でのアオコとか海の赤潮とかですね。

 

つまり、何が言いたいのかと言うと、

他の元素以上に、特にリンの場合は、
豊富にジャブジャブ存在するのは異常事態ですよ

というイメージを持っておくことが大事なんじゃないかと思っているということです。

 

他の元素は、ある程度バランスが取れているなら、ちょっとくらいなら多めで良い。

そこに、リンが供給されただけ、植物の成長が進む。

リンは使われずに蓄積し続けるということが殆ど無い。

 

こういう状態が理想的なのではないかなんて考えています。

 

他のところでも度々書いていますが、アクアリウム全般の一般論で言うなら最も警戒すべきは窒素であると言って間違いないですけど、陽性の水草が大量に茂っている水草水槽であれば、もっとも警戒すべきは窒素ではなくてリンが蓄積し続けてしまうことです。

コメント: 6
  • #6

    つつつ (土曜日, 26 3月 2016 11:11)

    ありがとうございます。
    かなり有名な人だったのに全く知りませんでした。

  • #5

    管理人 (金曜日, 25 3月 2016 12:26)

    そうそう理解の土台と言えば、これも。
    デュプラの「理想的な淡水水槽」 Kaspar Horst
    http://blog.goo.ne.jp/dupla/e/f609b76af43cfe3933725a3a82de725b

  • #4

    管理人 (金曜日, 25 3月 2016 12:21)

    >参考文献など分かったりしませんか?
    特にないです。ネット上にころがっている農業関係の文献はこの手の情報が豊富ですよね。あと植物生理学関係とか。
    あっ、そういえば、筑波大の人が書いた水草についての本は、畑作物とかと水草の基本的な機能の違いについて学んだ出だしになっています。薄っぺらい本です。
    http://www.amazon.co.jp/異端の植物「水草」を科学する-BERET-SCIENCE-田中-法生/dp/4860643283/ref=sr_1_9?s=books&ie=UTF8&qid=1458875942&sr=1-9&keywords=水草

  • #3

    つつつ (金曜日, 25 3月 2016 10:07)

    とても参考になります。
    参考文献など分かったりしませんか?

  • #2

    w (水曜日, 23 3月 2016 23:39)

    ありがとうございます。
    書きっぱなしにしている面もあるので、もし何か気がついたら教えてもらえると助かります。

  • #1

    匿名 (水曜日, 23 3月 2016 22:38)

    大変参考になります。いつも忘れた頃や水槽の調子が悪くなりそうなときに寄らせていただいています。