水槽内の生態系を支える多様な生き物

やエビ・貝などに、水草に、シアノバクテリアから緑藻類までコケと呼ばれている幅広い光合成生物、好気性の硝化バクテリア... 大抵の水槽管理で意識されている水槽内の生き物はこんな感じですよね。

後はカイミジンコなどの比較的大型のベントス(底生生活者)、嫌気性の脱窒菌も比較的意識されていますね。

 

水槽内をひとつの生態系として見た時に、その複雑さが増すほどに、水槽の構成員の顔ぶれが増して幅が付く...それらの関係の多様性が増すほどに、安定度は高まっていきます。

例えば、水槽水が急に白濁するなんていうのは多くの場合一部の有機栄養バクテリアが爆発的に繁殖することで起きたりするわけですが、あらゆるニッチがいろいろな生物で複雑に埋め尽くされている時には、そういうことは極めて起こりにくいわけです。

 

その他にも注目しておきたい生物は、いろいろあります。

 

■菌類(フンギ)

菌類って、細菌類...バクテリアなどのことではなくて、キノコやカビ、酵母菌などの仲間...フンギのことです。

菌類は陸上植物と深い相互関係を持って進化してきたもので、そもそもが陸上植物が水中に再進出したものである水草の殆どとも本来深い関係を持っています。

植物遺体の分解...中でも他の生き物が苦手なセルロースの分解を最も得意とするのは菌類であって、菌類がいなければ植物の栄養循環は止まってしまう...世界は再利用されない植物遺体だらけになってしまうと言っても大げさじゃないくらいです。

菌類との共生関係は大雑把にみれば高等植物になるほど深まる傾向にあるんですけど、中でも植物の根と菌が共生関係をつくる菌根をつくる菌根菌は非常に重要で、陸上植物の水分や栄養の補給に深く関わっています。中でも重要なのが土中のリンをかき集めてきて供給する能力ですね。
農業や園芸でリン肥料を撒いちゃうと消えたり活動を弱めちゃうんですけど、自然環境に生きる植物は菌根菌のおかげでリンを確保できていると言ってもそれほど大げさじゃないほど重要な役割を持っています。

例えば、アカマツに付いて相利共生している菌根菌がマツタケですね。

これについての知見はどうしても農業・園芸関係から深まっていて水草に関するものの研究はあまり進んでいませんが、菌根菌と自然環境にある水草の共生関係のレポートは幾つか出てきていますし、また水に関係する農業...水稲関連だとけっこうしっかりしたものがあります。

ちなみに菌根菌が居ない状態の水中にイネを植えて後から菌根菌を加えても共生は始まらないらしいです。ただ、水を張る前の状態で菌根菌と共生させ、その上で水を張るとその関係は維持されて成果をあげるということです。

菌根菌の農業園芸利用という点では、菌根菌自体が商品として売られ始めています。

例えば、アクアリウム関連でも知られたバイコムとかも製品化していますね。

実は、水上葉育成に興味をもった最初のきっかけは、この商品で、いきなり水中ではダメでも、水上葉育成しながら一度共生させたものを水中に入れてみようか...なんてところから始まってます。

リンを上手くかき集めて使ってくれるならありがたいですよね。

 

■有機栄養バクテリア

従属栄養バクテリアについて、アクア関連では有機栄養バクテリアっていう言い方をすることが多いような気がします。

残餌、糞、枯葉...なんかを...有機物(炭素源)を食べて分解してくれるやつですね。有機物を、二酸化炭素、水、その他無機物(例えばアンモニアやリン酸など)に分解してくれます。つまり、有機栄養バクテリアが居ないと硝化サイクルもはじまりません。(正確に言うと、魚はエラから直接アンモニアを排出しているから...始まらないことはないけど、残餌や糞や枯葉などからは始まらないということ)

水草は基本的には無機物の形でしか栄養を取れないので、水草は有機栄養バクテリアが居ないと成長できないとも言えます。...正確には有機物の取り込みもあるということが分かってきていますが、通常の状態の栄養摂取の総量を考えれば無視できるレベルのことです。

最近は、ハイポネックスなどの化学肥料にも炭素源(トレハロースとか)が入っていたりしますが、これは有機栄養バクテリアを活性化させておくことの重要性が広く知られてきているからですね。

ハイポネックなどの化学肥料はほぼ無機物だけで構成された即効性の肥料ですが、緩効性、遅効性の肥料と言われるものは、有機栄養バクテリアが少しずつ分解を進めることで、ゆっくり長時間植物に栄養を供給するというものですね。

彼らの活動が活発かどうかは、水槽の汚れ方とも深い関係があります。例えば、同じ量の枯葉・糞などが出ているとして、有機栄養バクテリアの活動が適切なら、そうでない場合と比べて水槽内のゴミは少なく、フィルターやパイプに溜まる汚れも少なく流量を維持しやすいということになります。

このようなことに注目した有機栄養バクテリアの添加剤やエサに選りすぐりの有機栄養バクテリアを添加しているなんていう例もありますよね。

彼らの長期的な活動を支えるためにある程度の炭素源を...腐葉土とかピートとかが底床内に仕込んでおくという考え方は...分量が難しくて下手するとコケや白濁の原因になるけど...正しいですね。

そうそう、余計な窒素化合物を処理してくれるものといえば、硝化菌や脱窒菌をまず思い浮かべるだろうし、それから水草もそうですよね。
でも、実際は有機栄養バクテリアもそうなんですよ。硝化するんじゃなくて、まさにエサとして・体を作る材料として窒素を含んだ糞や残餌や枯葉なんかを食べるわけですから。
枯葉水槽とか砂糖水槽のリクツですね。

これについてはこのページの後半で説明しています。

 

■その他の特に意識しておきたいバクテリア

硝化バクテリア、有機栄養バクテリア以外にも意識しておきたいバクテリアはいろいろいます。

まずは、ソイル水槽の末期で恐ろしい状況をつくりだす硫酸塩還元バクテリア...猛毒の硫化水素をつくりだすやつらですね。ソイルには硫黄分がけっこう含まれていて、だから水草の必須栄養素である硫黄分を添加する必要はないわけですけど、ソイルが嫌気化するとこいつらの活動が始まって、硫黄分を使って猛毒の硫化水素をつくりだしちゃうわけです。

それから、油膜をつくる主たる原因である鉄バクテリア。反応性が高い鉄が不安定な状態で存在することは植物にとって良いことばかりではありません。リン酸鉄は根や葉を溶かしてダメにしちゃったり。新芽もダメにしてしまいます。その鉄を処理してくれるわけですね。

乳酸菌も少しは意識したいですね。魚の健康を考えたら。

人と同様に魚の腸内にも様々なバクテリアが生きていて共存関係をつくっているわけですけど、所謂、善玉菌が減少すると悪玉菌が増えて体調を壊したりします。この善玉菌の代表は魚でもやっぱり乳酸菌ですね。

あのビオフェルミンは養殖業者用のものもあったりします。

私は人用のビオフェルミンをたまに一粒拝借して、砕いてエサに混ぜてあげたりしています。よく食べますよ。

その他にもバクテリア(細菌)やアーキア(古細菌)の役割は非常に大きく幅広いので、全部把握するなんてことはできないわけですけど、いろーんな目に見えない連中が複雑な関係をつくっているんだという意識だけはもって、例えば魚病薬とかコケ駆除のクスリとかをやたらと水槽内に入れちゃうのは、余程の非常事態以外はやめたほうが良い...一瞬このことを考えてみて損は無いってことですね。

最近、ちょっと気になっているのは、汚水処理関連の人たちが注目している脱窒性リン蓄積バクテリア。

硝酸とリン酸をどんどん吸収してくれるんですよ。

 

■各種原生動物(ミドリムシ、ゾウリムシ・ラッパムシ・ツリガネムシ...)

「稚魚を育てるのにインフゾリアを沸かせる」なんて言いますよね。そのインフゾリアの中の主なものは各種の原生動物で、繊毛虫(ゾウリムシとか)や鞭毛虫(ミドリムシとか)などですね。

こいつらは、健康な水草水槽である程度の期間が経ったものなら、水底のゴミをちょっととって子供の顕微鏡とかでみるといっぱい居ます。

稚魚にとってだけ大事なのではなくて、エビとかも食べてますし、魚だってテトラとかは水底の浮遊物をけっこう突付いて食べることを通してこいつらを食べています。

大事な分解者であるとともに、大事な生きエサです。

 

■その他 多様なベントス(底生生物)

プランクトン...浮遊生活者は、水槽内の場合、発生してもあっという間に魚がみんな食べちゃうので意識してもあまりお目にかかれないわけですが、ベントス...底生のものは、前景草の間やソイルの粒の間に沢山発生します。

目を凝らすを見えるってものだと、ミジンコ(甲殻類)やセンチュウ類、ミズミミズのような環形動物、ヒドラ...クラゲなどの仲間・刺胞動物、プラナリア...扁形動物 ...いろいろいるわけです。

ヒドラとかプラナリアとか中にはあまり出てほしくないものもありますけど。

底床環境維持といえば、ミミズをソイル水槽に放して飼うことで、底床内の通水性の維持、団粒構造の再構築などを担わせようなんてことをしている人も居ますね。畑を耕してくれる畑の神様の役割を水槽内でやらせようってことですね。
実際、そのあたりで捕まえてきたミミズはある程度の酸素濃度があれば水槽内で全く問題なく生き続けられるようですし。

実は私も団粒構造が壊れてソイルの寿命が尽きるなら、ミミズに再生させれば良いんじゃないの?って同じことを考えていた時期があったのですけど、YouTubeで水槽内のミミズの様子を見て、あまりの素早い動きにゾッとして...ライトが付いている間はソイルの中にいるらしいんですが、暗くなると水槽内を縦横無尽に動き回るらしい...、こりゃリビングの水槽じゃ無理だわって諦めたことがあります。

自分の部屋に水槽を置くことがあったら、いずれやってみようとは思いますけど。

もっともヤマトヌマエビとかの夜間も活発に活動する捕食者を強力にラインナップしておけば底床から出てこないようにならないかな...なんてことも考えてたりするのですけど。

それと、目立ちすぎてとても鑑賞水槽に耐えられないシマミミズとかじゃなくて、ソイル水槽にピッタリの性質をもった調度良いミミズがどこかに居るのじゃないか?そのうちに誰かが発見してくれるのじゃないか?なんていう勝手な期待も抱いています。

ミミズが長期維持してくれるソイル水槽とか夢ですね。

もっともアクア業界にとって、定期的に入れ替え購入してくれるソイルの売上はバカにならないものでしょうから、そんなもの出てくてくれたら困るだろうけど。

あと、そんなものがスタンダードになったら、女性のアクアリストは敬遠するでしょうね〜。あとやろうとしても、「見えなくてもそこにミミズがいるって思うだけでイヤ」な人もいっぱい居るんだろうから、本人は良くても家族の反対が強くなって良いこと無いかもしれませんね。

私は欲しいですけど。

それからカイミジンコは私としてはかなり重視しています。
ミジンコは甲殻類で...まーちっちゃいエビみたいなものですね。ミジンコと名がつくものの中でもカイミジンコは浮遊もするけど底床のソイルの中や前景草の間などにも入り込んでくれます。 さらには魚にあまり食べられない...他のミジンコは大喜びで食べちゃうけど、カイミジンコは口にしても吐き出したり、飲み込まれても生きて排泄されたり...他のミジンコほど魚にやられないので、水槽の中で生き延びてくれます。

でもって食欲旺盛にソイルの中を動きまわって掃除してくれるわけです。
「前景草の奥の方やソイルの中まで入り込んでくれるエビ」って感覚ですね。

たまに「カイミジンコが爆殖するのは水槽崩壊が近いサイン」なんて言ってる人もいますが、そりゃーそうでしょう。
環境が栄養過多になってるってことですから。
貝類とか線虫類、ミズミミズとかどれもそうですが、こういう掃除屋さんが増えすぎるってのは、それが増えすぎたから崩壊するんじゃなくて順番が逆です。
彼らのエサが...掃除屋が処理すべきゴミが溢れた汚い環境だからです。

まともな環境なら...さらには魚が入ってれば、増やそうとしたって爆殖なんてしないですよ。そもそもソイルや前景草の茂みの中から出てくるなんてことも無いくらいです。

 

こういった多様な生き物が水槽の中に増えてきて、複雑な関係を相互に張り巡らせて安定していく...っていう状態は、ヘンなクスリ使ったりとかしないで順調にやっていくと、だいたい立ちあげから半年くらいでやってきますね。
やっぱり半年ってタイミングは重要なんですよね。
半年でソイルの軟水化効果が切れてきたからリセットとか勿体ないよな〜。

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