現在、私はイニシャルスティックを追肥でソイルに埋め込むという使い方は一切していません。どうしてもソイルを痛めてしまうので。
セット時に底床内に埋め込んだり、水槽内へのばら撒きといった使い方はしていますが。
基本的には、カリウム等のミネラル供給は液肥を使っています。
それでも、あまり施肥について分かってないビギナーに「どの肥料を選べば良い?」って相談されたら...しかも、それがメールとか電話とかで水槽の状況を詳しく把握できないような状況なら、間違いなく「イニシャルスティックにしておけば」ってアドバイスしてます。
どうしてかと言えば、
- はじめての肥料を相談するような人が、窒素などが足りなくなるパターン...大量の陽性水草を元気に茂らせている・頻繁にトリミングする必要があるという状況はあまり無いはず。
それにそういう可能性は、水草の種類や量や水槽環境(特に光量とCO2)を聞けばおおよそ想像つくし。 - 必要なのは、まずはもっとも流亡しやすいカリウムであるはず。
- カリウム以外にもマグネシウム不足、カルシウム不足、鉄不足...などが原因で水草の調子が落ちてくるということもあり得るけど、このあたりもイニシャルスティックはカバーできる。
- イニシャルスティックは基本的には埋めて使うので、よほど大量に突っ込んだりしなければ、液肥のような急激な水質変化を招きにくい。
- ビギナーほど、基本的には施肥に慎重にならないといけないタイミング...水草の元気がない・トリミング後など...に施肥しようとする。
でも、イニシャルスティクは、ゆっくり効くから問題を起こしにくい。 - つまり、液肥ほど適量の見極めが難しくない。
液肥のようにマメに少量添加しながら適量調整する必要がない。
ビギナーにピッタリでしょ!
もちろんベテランさんにもとても役に立つ基本的な肥料のひとつだと思っています。
以下、ぐだぐだと長い内容だけど、要点だけは赤文字にしておきますので、そこだけでも拾い読みしてもらえればと思います。
ブログ記事(2013.5.9)を転載。
イニシャルスティックの使い方
…今、前に書いたものを見てみたら、その時も同じこと書いてた。
で、前に書いたものを読みなおしてみたら、考え方書いているだけで具体的なことは殆どまるで書いてないんですよ。
実際肥料について具体的なことを書くのはけっこう恐ろしくて、千差万別の水草水槽で決まり毎のようなアドバイスなんて出来るわけもありません。
でも、水槽はじめた頃はワラにも縋りたいって感じで、いろいろ調べていろいろやってたな~と思い返して、誰かの役に立つこともあるかもって、少しだけ具体的なことを書いてみます。
窒素系の肥料は上手くアドバイスできなかった時のことを考えると恐ろしいけど、イニシャルスティックなら、たとえしくじっても、あまりに酷いってことにはならないと思うので、イニシャルスティック限定で。
もちろん、これはあくまでも私のやり方ですから、気をつけて書くつもりだけど、この通りやって失敗しても責任持てませんから。念のため。
テトラのイニシャルスティックは、メーカーが言ってるわけじゃないけど、 どうみても草木灰を固めたもの(追記。そう言われているけどいろいろ検証してみるとどうやら違いますね。少なくとも単純に草木灰じゃないです)です。殆どカリ。
草木灰ですから、カリだけじゃなくて、カルシウム、マグネシウム、鉄、マンガンなど...いろいろな必須元素も含まれているはずだし、基本は埋めて使うのでゆっくりじっくり効いていくので、失敗も少ないわけです。
立ち上げ時は水草も良く成長していたけど、それから何ヶ月か経って
「最近水草の成長力が落ちたな。トリミング後に回復してきた時の草姿が悪くなってきたな」「ソイルの肥料分が切れてきたんじゃね?」って感じはじめていて、さらには具体的に以下のようなカリ不足の症状が出始めていたら、間違いなく施肥のタイミングだと思います。
・オークロとかの古い葉が割と早く白っぽく黄色っぽくなる。例えば、まだこの葉っぱ出てから1ヶ月も経ってないぞとか。
ちなみに、カリの過剰自体はそれほど分かりやすい問題には直結しないのだけど、カリが過剰だとマグネシウム、カルシウム、鉄などの吸収を抑制してしまうので、結果的にこれらの欠乏症の原因になります。具体的には、
・下葉の黄化・白化 ... 葉脈には緑が残る
・成長点の縮れ
・細根が減り根が太くなる・根腐れが起きやすくなる
...などですね。
ちなみにリクツ面からも押さえておくと、
植物はカリウムを大量に必要としますけど、カリウムは植物の構造体の構成要素自体になるわけではありません。植物体内での光合成関連、細胞壁の生成、その他タンパク質や炭水化物の生成...といった各種の化学反応に関連して使われます。各種の酵素を機能させる上で不可欠なものです。
タンパク質を生成するにあたり、植物はアンモニアや硝酸などのかたちで窒素を取り込むわけですが、これは植物体には毒です。取り込んだらさっさとタンパク質を生成する必要があるわけですが、カリ不足だと取り込んだこれらの「毒」が素早く処理されないので、植物が弱り病気になりやすくなります。
カリウム不足が、水草の腰が...下のほうが弱る形で症状が出て来やすいのは、カリウムはこれらの点で必須なので、より重要な部位であり盛んに化学反応を行っている成長点などに優先的に送られるからです。
リクツはともかく、前述のカリ不足の症状が出てて、少しは緑藻とかも出ている状態なら…つまり窒素分はあるぞという状態なら、イニシャルスティックを突っ込みましょう。カリ過剰なら、控えなきゃですね。
イニシャルスティックを使ったほうが良さそうなら、うちの60水槽くらい水草が…有茎草とか成長力のある水草が割と沢山あるなら、ひとまず20粒くらい突っ込んでみましょう。
もちろん、カリの効きはpHや硬度と関係が深いのだけど、かなり硬度が低い環境だとしても、上記のような症状が出ているなら、20粒くらいは、ぜーんぜん全く問題ないです。
正直、20粒ってのはいい加減な感覚値ですけど、少なくともこれで多すぎるってことは絶対に無いです。むしろ、さっきの状況に対する「適量」考えたらかなり少なすぎるはずですけど、ひとまずは少ないくらいで良いんです。
有茎草が少ない、シダ、アヌビアスとかの陰性系の水草や成長が遅い水草が中心とかって環境だと、ごめんなさい。具体的なアドバイスは出来ないです。まるで適量が分かりません。
イニシャルスティックは、ピンセットでつまんで、グイっと奥の方に突っ込みましょう。…もっとも上記のような症状が出ているなら何粒か溶かしちゃったっていいくらいだけど。
グイっと奥の方に突っ込んでもピンセットが引っかかりが強いヤツだと、抜くときにイニシャルスティックも浮いてくることがあります。ゆっくりピンセットを抜きましょう。前景草を植栽する時と同じですね。
ちょっとくらいなら浮いてても平気ですけど、浮いている…水中にスグに溶け出すのがあまりに多いと、1週間後くらいに全体がコケるかもしれません。
2週間しないで、トリミングしたところから新芽が出てきて頂芽がしっかり展開し始めるっていう環境なら、トリミングと同時にやっちゃってもOKです。
施肥の基本は、「体調崩した病人に無理にご飯を食べさせてもますます元気なくすぞ」「少し元気出てきてから徐々に食べさせていく」っていうイメージですが、イニシャルスティックは微生物に分解されて初めて効き始めるので、効き始めるまでにかなり時間が掛かるんです。だから、そのくらいで結果的に丁度いいわけ。
個々の環境や突っ込む深さにもよるけど、2-3週間で少しずつ効果が見えてくるはずです。
その後、一時的に調子が良くなったけど、なんかまた少し勢い落ち始めたな~とか感じたら、前にあげた症状とか出てなくても、また追加で同じくらいずつくらい突っ込んで下さい。
イニシャルスティックは、大量に使っても・ちょっとくらい使いすぎても比較的安全性が高い肥料ですけど、気をつけたほうが良いのは、使い過ぎるとpHが上がります。
特に、さっさと効かせようとか思って溶かしたりしたらテキメンです。
なにを目指しているかもにもよりますけど、一般的には水草水槽で高すぎるpHは良いことは殆どないですからね~。大量に入れたら数日してから(溶かしたら割りとスグに)pHチェックしたほうが良いです。
(追記。ごめんなさい。ここは完全に間違っていました。イニシャルスティックは少なくとも投入時はpHを下げます。その後かなり時間を掛けて...おそらくはカリの溶出などによってpHを上げていきます。ですが、これは水草が使ってしまうわけですから、現実の水草水槽での使用場面ではイニシャルスティックはpHを下げると理解しておいた方が正解だと思います。詳細は頁の最後のところを参照)
それともう一つ、あまりにピンセットでイニシャルスティックをソイルに押し込むってのを繰り返すと、当然ですけど、やっただけソイルが崩れてどんどん泥になっていきます。泥化は、ある程度進んじゃうと底床を嫌気化させていいことないですね。根がダメになっていくし、ヘタすれば硫化水素出すし。
だから、イニシャルスティック突っ込み続けるにしても限度はありますね。これがイヤならイニシャルスティックを底床面に置いて溶かす、あるいは液肥ってことになるけど…。
それもイヤなら飼育水で溶いて、シリンジ使って底床の奥のほうに注射するって手もあります。注意しないと逆流して水中に吹き出したりもしますけど。
そうそう、肥料はコケの素だってのは、間違ってないにせよ、必ずしも正しくないですよ。
私は、以前にかなり栄養絞ってるつもりなのにアオミドロやツンツン毛が生えたみたいになるやっかいな緑藻にやられ続けたことがあったんですけど、(水草の栄養について調べてたらカリ不足の症状が出てたので)イニシャルスティックを突っ込み続けたら、たいしたことないレベル…柔らかい緑藻がほんの僅かに出るくらいになったってことがありました。
リービッヒの最小律ですね。
カリが少ないから窒素やリンを水草が上手く使えない。栄養分のバランスが悪い。そうして余った窒素とかがコケを育てるって。
肥料を絞るどころか、むしろ足してバランスを取ってやることによって、むしろ状況が改善することもある。
この経験が、「高回転型」にしよう!絞るより回そう、その方が簡単だって基本方針につながってるんですよね。
リービッヒの最小率については、実際は相当いろいろな要素が補い合えるってのが後から分かってきたわけですけど、それでも大雑把に何が主にボトルネックになっているか、律速要因なのかって捉え方は重要ですよね。
イニシャルスティク入れたら黒ヒゲが消えたなんて話もたまに聞きますよね。
これなんかもカリが供給されて肥料のバランスが取れて、黒ヒゲにまわっていた水中のリンとかが水草に消費されたってことなんじゃないかって想像できますよね。
今回書いたのは、かなりオズオズとやるやり方です。
自分の水槽についての理解を深めながら、だんだんより大胆に肥料を使う方向に行けるようにしていけばいいんじゃないでしょうか。
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水草の種類によっては、どうみても肥料不足っぽいのにコレをやってもイマイチ元気を取り戻しきれないのがいます。窒素やリンの要求量が大きくて主に根から取る分が大きいヤツらですね。クリプトコリネとかブリクサとかロータスとか…グロッソもけっこうそうですよね。
こういう水草の「なんか成長力がない。貧弱なまま。」「根張りが悪い。」なんてことには、イニシャルスティックだけじゃ解決しないこともありますね。そうなるともっと別の種類の肥料が必要になります。
それから、立ち上げ時の肥料もどこかで書かないとね。
ちなみに、ソイルの場合は、特に考えがなければ、ひとまずは立ち上げ時に肥料入れないほうが安全・確実です。
でも、赤土系で肥料分が少なくて水草が多い場合は、かなり早く肥料切れになるかも…ゆっくり効いてくるタイプを最初から仕込んでおいたほうが良いかも。
黒ボク土系で肥料分が多めの場合も、人工肥料を添加してあるタイプとかは別にして、基本的にはリンとか足りないかも。…そのうちに過剰になるから難しいけど。
水草の種類によっては窒素系の肥料もゆっくり効いてくるタイプのをしっかり入れておいたほうが良いかも…
って感じですか。
注意。 2014.12.5
□□□□のところについて。
「イニシャルスティックは草木灰である」というのはずっと言われてきたことですよね。
でも、2ちゃんのアクア板のコピペサイトでの書き込みを見たことと、ブログでのコメントがきっかけになって、
以下は、私の思い込みに過ぎないのではないか?と疑問を持つようになってきました。
- イニシャルスティックは(ほぼ)草木灰。
- 草木灰の上澄み液はかなりpHが高い。当然、イニシャルスティックもpHを上げる。
先のコピペサイトやブログでのコメントでは、
むしろイニシャルスティックはpHを若干下げるのではないか?
自分で測定してみたらpH下がった...と報告されています。
本当に草木灰なのか?という疑問もコピペサイトの内容では提示されていました。
確かに、本当に草木灰であるなら、1-0-25ってのも若干不自然ですよね。原料と焼き方次第でほぼカリ主体に出来るにしても、なかなかリンもゼロには出来ないですよね〜。...過去に0.1って草木灰は見たことがあるんですけど。1を大きく切ってゼロに近ければゼロ表示ができるのかもしれませんけど。
それとメーカーの告知物を改めて読むと「有機物を含む」とある。つまり炭素分が残っているということです。草木灰でも白くなるまで焼かなければ炭素分はかなり残りますけど ... ...疑い始めるとキリがない。
これ、残念ながら今イニシャルスティックを使っていなくて、手元に無いのでスグに検証できません。
検証でき次第、必要があればさらに修正します。
もし、私の思い込みに振り回されちゃった人が居るなら、ほんとごめんなさい。
2014.12.7
実験してみました。
ショップとかで魚をすくって入れるのに使われいるよく見かけるサイズのプラケに水道水(pH7.4)を入れて、
イニシャルスティック5粒を入れて、数時間置いて砕けてきてからよくかき混ぜてpHを測定してみました。
結果は6.9。0.5も下がりました。
結論。イニシャルスティックは少なくとも投入時はpHを下げますね。
2014.12.20
その後、pHはゆるやかに上昇を続け、2週間近くかかって最終的には元の水道水のpHを越えました(7.6)。
つまり、イニシャルスティックは最終的にはpHを上げます。
ただし、これは水草が入っていない場合です。
ゆっくり溶出してくるpHを上げる成分...おそらくはカリなど...は、水草が使ってしまうハズですから、残るのは酸性物質です。ですから、実際の水草水槽での使用場面を考えたらpHを下げると理解しておいた方が正解だと思います。
けい (金曜日, 15 3月 2019 21:26)
興味深く拝見しました。有機物を含む、というのは有機性の結合剤 (CMC)等で、造粒に必要な成分だと思います。これに、難水溶性の有効成分である、カリウム塩 (イライト、霞石)と水酸化鉄 (Ⅲ)等を加え、pH調整成分を加えて水で混錬し、押出造粒、乾燥して製造していると思います。難水溶性のカリウム塩は、低床中の微生物によって緩やかに水溶性カリウムに変換され、植物が利用できるようになるようです。
あ (木曜日, 05 4月 2018 17:42)
試行錯誤の経緯が具体的に綴られてて参考になります。
ありがとう!
hjg (土曜日, 02 8月 2014 23:35)
gくfjcfjhhkllぎゅ