水換え

「水槽には硝酸塩が溜まるから定期的に水換えをしなければならない」ってどこにも書いてあって、最初は素直にそれを信じていたんですが、
実際には陽性の水草が水槽いっぱいに生い茂っていて、魚が少なめな水槽なら、実際には「硝酸塩不足」になっちゃいますよね。
水中の硝酸塩なんてみんな水草が使っちゃうから、わざわざ窒素分を肥料として足さなきゃならなくなる。

 

ならば水換えをしなくても良いのか?
というか水換えをしてわざわざ肥料分を排出するのは愚かなことなのか?

 

これは、言いかえれば「水換えは硝酸塩を排出するためだけに行われることなのか?」ってことですよね。

 

水換えによって、排出されるものと供給されるものがあります。

 

排出されるものは

  • エサや肥料 → これらから直接溶出する成分や魚の排泄物・枯葉などとなって → 硝酸塩・リン酸・その他有機酸類など
  • ソイルや石、流木などから溶出した様々な物質
    有機酸類やミネラルなど
  • バクテリア ...硝化バクテリア・有機栄養バクテリアは、フィルター内の濾材やソイルに定着しているだけでなく、水中に漂っている分もかなりあります。なので、水を捨てることはバクテリアを捨てることになります。

供給されるのは

  • カルシウム、マグネシウムなどのミネラルなど
  • カルシウム、マグネシウムなどと結びついている炭酸水素イオン:KHを決めるもの
  • その他

 

って感じですね。

どれもこれも水草水槽には無くてはならないものであり、また同時に過剰であってはいけないもの...適切な量存在する必要があるものです。

 

カルシウム、マグネシウムなどは、水草の必須元素ですから水槽内に石などのこれの持続的な供給源があれば別ですが、そうでなければいずれ使いきってしまいます。
pH変化の緩衝力をつくる炭酸水素イオンも様々な生物由来の酸で消費されていき新たな供給が無ければKHは下がり続けます。

 

うちのあたりの水道水は、時期にもよりますがおおよそ、pHが7ちょっと、GHが3〜4くらい、KHが1〜2くらいなので、水槽内のGHやKHがこれより低ければ、カルシウムやマグネシウム、炭酸水素イオンを足すことになりますね。

実際は石も入っているので、GHは水道水よりも高くて、KHは水道水よりも低いですけど。

 

結局のところ定期的な水換えは、これらを引いたり足したりすることで、長期的に見た時に大きな水質変化を防ごうというものですね。

当然、これらの足し引きを...調整を、水換え以外の手段で出来るのであれば、足し水だけで済むということになります。
もちろんそれはリクツの上では可能ですけど、難しいことを考えるよりは水換えをしておこうよ。定期的にということですね。
その方が、長期的に見て変化を緩やかにできるでしょ?(一時的には大きな変化になるけれど...)ってことです。

 

それにもっと実際的な問題として、水草水槽は頻繁にトリミングを行うわけで、前景草とかをトリミングすれば、給水口にビッタリ細かい葉切れが張り付きます。
例えばこれをプロホースで吸い出して、水を吸い出しただけ新しい水を入れるだけでも、結局は水換えをしたのと同じことになりますしね。

 

水換えをする意義としては、さらに定期的に許容範囲の小さなストレス:刺激を与えるということもあると思います。

例えば魚は大きなストレスに...人に追い掛け回されるとか重たいドアの開け閉めの音が近くで頻繁にしているとか全換水とか...ですね...こういった強いストレスに常に晒されていると、発育不全・病気になったりしますが、逆に本来はストレスになりえるような環境変化の刺激がある程度は必要だったりもします。例えば、急激な水質の変化・流れの変化・水位の変化、温度の変化、日照の変化...などが繁殖行動のトリガーになっていたりするわけですよね。

もちろんこれは水草も同じで、これらの変化を何かしらのきっかけにしてライフサイクルを決めていたり、防衛機能を活性化させたり...しているわけです。

自然の中では、雨季があり乾季があり、泥水になること、タンニンが沢山水中に溶け込んだりして水質が変化したり...いろいろ変化があるわけですよね。これらに対応することで、体の活性を・様々な調整機能を高めていたりするわけです。

人間だって同じですよね。ストレスに曝されすぎると病気になったりしますが、逆に全くストレスの...刺激の無い環境では、それこそ生きる気力さえ失っていったりします。

水換えは、水草や魚に取ってストレスです。

浸透圧がpHが水温が...微妙に・急激に変化します。

それがあまりに頻繁に起き続けるのはよくありませんが、週に1度とか小さな変化が起きるのは、適度な刺激になるはずなんです。

 

最後にもう一つ水換えの意義を。

水槽は、まー言ってみれば楽しいオモチャじゃないですか。

オモチャって言ってるのは、好きに遊んで要らなくなったらポイって捨てちゃうようなもののことを言ってるわけじゃないですよ。損得抜きでいじりたい・関与していきたいもののことです。

クルマ好きな人に取ってクルマはオモチャですよね。常にいじっていたりしたかったりするもの。リクツ抜きで時間とお金を...愛情を掛けちゃうもの。そういう意味でです。

そういう大事なオモチャをいじる時間は出来るだけ欲しいじゃないですか。「定期的に水換えをしましょう。しなきゃいけません。」というのは、そういうイジりたい欲求に応える大義名分になると思うのですよ。

「水換えしなきゃいけないんだよ。そうしないと魚や水草によくないんだ。」って家族に言えるわけです。

で、水換えの時間は、水槽をいじることに専念できるのですね。

たまに水換えするのが心底面倒で嫌いだって人はそもそもアクアリウムをやる資格が無いのだ!って思いませんか?

そりゃー本当に忙しい時はパスしたいし、面倒ですけどね。

でもちょっと余裕があるなら喜んで水槽をいじるのが、アクア好きな人ですよね。

 

リクツはともかくとして、うちの場合の水換えのパターンですが、

 

ソイルからの養分溶出が多い立ちあげ期...それも最初の1-2週間は、かなり頻繁に...例えば週2回とか、それも全体の1/3程度の水換えをします。

養分排出だけを考えれば1/3どころかもっと水を捨てたいところですけど、やっぱり経験的には1/3以上の換水はキケンですね。バクテリアへのダメージが大きくなりすぎるっていう印象を持っています。

また週2回...最低限、中2-3日は間隔を開けるってのも、経験的にギリギリな感じです。これ以上頻繁に換水するとバクテリアへのダメージが回復しなくなってどんどん環境が崩壊していきます。

 

その後、1ヶ月とか2ヶ月くらいのまだソイルの栄養分が充分にある期間は週に1回1/4くらい、

さらに完全に安定してからは、2週に1/4くらいの水換えをするだけです。...というか、ここに至れば前述のように水換えの必要性はあまりないのですけどね。実際は、給水口に付けてるスポンジに張り付いたり、その周辺に集まっているトリミングクズを吸い出したり、足し水したりしてると、結果的に1/4換水くらいの感じになるってだけです。

 

もちろんこれはうちの今の水槽が底床に仕込んでいる栄養分が比較的少ないからで、腐葉土やその他肥料分をたっぷり仕込んでいる場合は、もっと水換えをする必要があるかもしれませんし、施肥量や給餌量によっても、どのくらいが適切な水換え量になるのかは変わってくるはずです。

 

この水換え量がどの程度が適切なのかの指標になるのは、やはり緑藻の出方でしょう。もしエビや貝が居なければどの程度の緑藻が出るかですね。

1週間経てば、ガラス面が薄っすら緑色になってくるなんていう環境であれば、週に1/3くらいは水換えすべきでしょうし、いつまで経ってもガラスは綺麗だよ。そりゃ1ヶ月に1回くらい実際にガラスを擦ってみれば少しは汚れてたってわかるけどさ...なんて環境ならうちと同じくらいかもっと少なくても良いはずです。

うちが2週に1回なのは、少なくとも2週に1回はそれなりの量をトリミングするので、ついでに・結果的に水換えになるってことですから。

 

ただ、あまり水換えをする必要性が高い環境じゃないからと言って、1ヶ月に1度とかというのは、水換えをした時の変化が大きくなりすぎるので、出来るだけ1回の量は少なくても頻繁に水替えするのが理想的だとは思いますけど。

 

実際の水換えですが、うちは換水量も少ないので、

水温計で(というより殆どは手で感じる温度で)温度を合わせて、コントラコロラインで塩素を抜いたものをザッバーっと入れちゃうだけです。

換水量が多い時は...1/3以上換水するような時は、例えば、5リットル入れたら10分休んでを繰り返して40分掛けて換えるとかして急激な変化を避けるようにはしていますけど。

 

ちなみにコントラコロラインの規定量は実際の水道水の残留塩素量に対してベラボーに多すぎってのはよく知られているところですけど、実際どの程度の残留塩素があるかは見ておいても損はないですよね。測定しなくても地域ごとに公表されてますから適当なキーワードでググってみれば出てくると思います。

私はいつもバケツいっぱいに、ほんのチビっと目測で入れて終わりですね。かなりながいこと規定量なんて入れてないです。

 

うちのあたりの水道水のpHは7ちょっと、水槽は殆どの場合は6〜6.5くらいの間で維持しているので、もしpHも合わせるとしたらpHを下げることになります。

無理に下げないと下がらない時は、pH調整剤を使うこともあるのですけど、
ソイルやフィルター内のピートモスの効果が高い時は、水槽水よりpHが高い水を水槽に入れても、1日も経たずにpHは元の水槽水のpHまで下がります。
こういう状況でpH調整剤を使ってpH合わせなんてやると、想定以上にpHやKHを下げしまうこともあります。

逆にpHが上がりやすい状況があると、pH調整剤を使っても何日かでまでpHがあがってしまったりするし。
逆にpHを上げたい場合もまた同じです。

このあたりは先に根本的な対処が必要ということですね。

 

それに先も書いたように若干のストレスは悪く無いと思っていますから、あまり細かいことは気にしません。

 

もし、できる限り水質を合わせていこうとするなら、優先順位から行けば、

  1. 水温
  2. 浸透圧 ...参考値としてのGHなど
  3. pH
  4. その他の要素

を合わせていかなくては行けません。

このあたりはいずれ水合わせをテーマにして書こうと思いますけど...よほどセンシティブな生体を扱っているとか、水槽水と水道水の違いがものすごく大きいとか...でもなければ、気にする必要はないと思っていますから、またいずれということですね。

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