以下はブログ記事(2013年09月01日)を転載したものです。

病気が出ない水槽って? +魚病薬を使わない治療

先日、「いい加減、水槽の周りを整理してよ!」って言われて、水槽の周りに散乱しているモノを片付けてたのだけど、ごそごそやってたら何種類か魚病薬が出てきました。

そういえば、アクアリウム始めてから半年くらいは、魚のいろいろな病気を体験して、その度にアワアワしてたんですよね。
白点病とか尾腐れ病とか、いろいろ。...なんかもう遠い記憶になりつつあるけど。
でも、仕事から帰ってきて水槽見たら、発病確認して、焦って魚病薬と隔離水槽つくる機材を買いに急いで出かけたなんてことがあったな…ってのは覚えてます。

いちど水槽が完全に安定しちゃってからは、病気で魚を落とすってことは幸いにも全くなくなったので、すっかり病気のこととか考えなくなっていたけど、
昨日は、水槽のメンテ不足(給水口の詰まり)でグッピー一匹落としちゃって、ちょっと魚の健康についても考えてみようと。

世間で語られている魚の病気対策・健康維持については、極端に分ければ、

A.病気は病原菌を絶たないとダメ。隔離水槽で薬浴させて水槽は完全消毒リセット。普段から殺菌灯とか使って病原菌を殺しておく。
とにかく普段から清潔がいちばん!病気は底床や濾過槽が汚れたりすると出てくるので、常に全てをキレイにクリーニングしておくこと。ソイルの底床とか水草がビッシリ入っているとかは掃除しきれないから、本当は魚の健康を考えたら良くない。

って考え方と

B.完全消毒リセットなんてとんでもない!病原菌の殆どは常在菌であると捉えるべきで、バクテリアなどの水槽内の生態系をぶち壊してしまうからナンセンスな考え方。水草が健康的に生い茂っていて安定している水槽なら大抵の病気は治ってしまうくらいだ。殺菌は、病原菌の増殖余地・培地をわざわざ新たに切り開いてつくってやるだけのことになる。
底床微生物など水槽全体の多様性・生態系の豊かさが大事。ニッチが埋められていることで病原菌の過剰な増殖をおさえることができる。このためにはやたらと底床掃除することとかは控えたほうが良い。
実際、浮泥が多いような水槽の方が病気が出ない。

っていう2方向があって、
その間に多くの現実的なアプローチがあるわけですね。

もちろん、他にも、
魚の免疫系を弱らせるストレスが病気の最大の原因… 水質の急激な変化、その他水槽内のいじりすぎ、人が常にウロウロしていたりいろいろな音がするところがダメ、相性の悪い魚の同居や隠れる場所がないこと…これら全てのストレスがいけない。ストレスを排除すること。
とか

とにかくいろいろな考え方・重視するポイントがあるし、現実にはこれらの組み合わせですよね。

実際はどれもこれも間違っているわけではなくて、例えば、水をすごく汚す魚を飼っていれば、「やたらと掃除するな」なんていう考え方はあり得ないわけだし、もともとの生息地がかなりの低pH・低BODの魚とかだったりすると、もともと極端に病原菌が少ない環境だから、殺菌灯とかも使った意識的な除菌も必要かもしれないし…。

いろいろな飼育パターンで生まれたいろいろな考え方がネット上で混在しちゃって混乱しているって感じですよね。

ちなみに私の方針というか考え方としては、
…もちろん今の水槽に入ってる魚種・水槽の環境の場合ですが、

1.生態系をできるだけリッチに…多様にする。
水草、底床微生物、バクテリアを充実させる。
腸内のビフィズス菌などの有用菌が充実していると、病原菌の過剰な繁殖余地が無くなるように、とにかくニッチを埋めていく。

2.魚に・水槽の生態系全体にできるだけストレスをかけない。
いじりすぎない。環境の急変を避ける。

3.出来るだけ多様なエサを与える。偏らせない。

4.もし病気が発生したら、隔離治療する。水槽の環境に特に問題がなければ、とにかく水槽はいじらない。

って感じですね。

もともと私自身が、

例えば風邪ひいたくらいでやたらと病院に行く・クスリをいろいろと飲むってのは、かえってよくない・クスリとは本質的に毒くらいに思っている。やたらと殺菌・除菌というのは、病原菌の活動余地をわざわざ開けるような極めて危険な考え方。現代の生活環境はそこそこ清潔なのだから、遺伝子に組み込まれた・歴史的な記憶に刻み込まれた過剰な病原菌恐怖症に振り回される必要はない。清潔指向の行き過ぎは精神病の一種。

でも同時に病院に行かなきゃ…思い切った積極的な手を打たなきゃ治らない病気も当然ながら沢山ある。そこは状況判断で必要に応じて素直に病院に行き、さっさとクスリを使うなりなんなりすべき。

…とかって考えているわけで、
そういう考え方を水槽管理にも投影しているわけですね。

いや違うか。そうじゃなくて、
出来るだけ多様性を詰め込んだ箱庭を…ちいさな生態系をつくって維持管理したい。底床微生物が観察できないようじゃつまらない。
ってのが、水草水槽に求めてることだったりするから、
そういう考え方で管理できる水槽にしようとしている
ってことですね。

そうだ!いわゆる魚病薬を使わない対処法ってのが幾つかありますよね。
病気に出くわしていた時期には、当然それらも調べて実践してみてたりするので、そのあたりを簡単に書いておきます。
詳しくは、各キーワードで適当に検索してみて下さい。
どの方法も得手不得手はあっても、かなり広範な感染性の病気(真核生物、バクテリア、菌類、ウィルス)に効くって言われています。

1.唐辛子を水槽に入れる。→白点病とかの単細胞の真核生物などが原因でおきる病気
これは効きますよね。水草にも影響なさそうだし。
でも、成分が残留するであろうし、メカニズムもよく分からないので…唐辛子自体が殺虫・虫を忌避する・防かびなどの効果があるので、きっとそれですよね。エビとか甲殻類にはどうなんだろう?底生微生物には?

2.塩浴
魚より病原菌の方が遥かに浸透圧変化に弱くて、細胞が破壊されちゃうわけですね。
これも効きます。でも、水草水槽に塩を入れるわけにいかないから、隔離水槽つくってやるしかないですね。
それと淡水魚でも種類によって塩に強い奴と弱い奴がいるので、そこはしっかり確かめてからやらないとヤバイですね。
メダカとかの塩に強いのなら真っ先にやってみる価値がある方法ですね。

3.オキシドール(過酸化水素水)。
魚や水草は活性酸素への対応力・かなりの防御力を持っているけど、この機能が弱い病原菌は活性酸素によるダメージを強く受ける...っていうリクツ。オキシドールの利用には、最終的には酸素と水になってしまって残留しないので水槽に直接投入できるという最大のメリットがある。これもかなり万能薬と言えますね。だけど、それなりの濃度で使うと、モス、シダ、貝などがやられる。

4.水温を上げる。
人が感染性の病気になると熱をあげて病原体を殺そうとするのと同じリクツですね。
例えば白点病の病原体は35度くらいで死滅する。硝化バクテリアは比較的高温に強いし、魚もゆっくり上げていけば種類によっては大丈夫。水草も種類によるけど、比較的短期間なら大丈夫なものが多い。少しの間でも高温にさらされると死んでしまうものを予め避難させた上で、徐々に水温を上げていく。
ちなみに病原体を死滅させるつもりでなくても、例えば白点病の病原体は30度くらいでもかなり弱るので、ちょっと高めの水温にするくらいで他の手段と併用するってのもありますよね。
死滅させるつもりなら短時間でもピークは40度くらいまでは持って行かないと確実には効かないらしいですから。それだと…病原体の前に落ちちゃう生体続出になりますね。

どれも魚種や水槽の構成をちゃんと踏まえて、適切にやらないとキケンですね。
実際にやる際には、ネットを適当に検索して自分のところの魚種などと同じものについてのケーススタディを幾つか探して見てみたほうが良いです。
例えば、ネットで見つけた事例がグッピーやメダカを対象にしたもので、それを南米産小型カラシンにそのまま適応したりしたら、下手したら魚を殺すことになると思います。メダカは淡水魚としてはかなりの塩水濃度に耐えられるし、急にあげなければ40度とかの高水温にもかなりの間耐えられます。南米産小型カラシンはメダカに比べれば遥かに塩分に弱いからやるとしてもごく短時間ですし、40度にしたら死んじゃいますから。
あーそうだ!
殺菌をする必要のある病気だけじゃなくて、胃腸の調子が悪くなるってのもありますよね。糞がおかしい、食べ過ぎで不調、お腹が膨れるとか。
こういう時は、私は、ココアパウダー...バンホーテンのミルクや砂糖が入っていない生ココアとか、ビオフェルミンを粉にしたものなどをエサと一緒にあげたりしてます。
けっこう効きますよ。ビオフェルミンは実際に養殖業者用のクスリとかもつくってるしね。

なんにせよ、基本は病気を出さないこと。病気が出ない環境をつくることですよね。

水草と魚の病気について

 

「水草が安定して生い茂る水槽では、そうでない場合と比べて、魚が病気になることは遥かに少なくなる」

 

これについては、曖昧な経験談ってだけじゃなくて、関連する研究もかなりありますね。

 

一つは、水草が自己防衛のために様々な抗菌物質を出していること。病原菌だけでなくて、アレロパシー物質によってコケなどの繁殖も抑制する例が幾つも見つかっていること。

...地上の植物に広く見られることなので、水草だから見られないって方がおかしいですよね。地上の植物に比べると分かっている事例は少ないけれど、今後どんどん報告が増えていくのではないかと思っています。

 

また水草が水中の有害物質を取り込み・分解することについての報告も沢山あります。様々な有害な有機化合物や重金属などを取り込むことですね。

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