ブリクサ ショートリーフ(ノボグイネエンシス)
ブリクサ ショートリーフ(ノボグイネエンシス)
日常の生活風景の中だとよくイネ科の植物がつくってるこんな感じの草むらはよく見かけるわけですけど、水草だとブリクサくらいですよね。
テネルスとかを密植したところで、それはやっぱり違うし。
イネ科植物に多い(ブリクサはイネ科じゃないけど)この手の細長くて薄いテープ状で上を向いて密集している葉は、光の利用効率がとても高く、個体としても密集して生えることができます。
丸くて厚い葉と違って、下の方の葉までしっかり光が届くし、直射光だけでなくて散乱光もよく捉えます。
なので、この手の草は、ボリュームの割には全体が明るく感じるんですね。
「上の方だけが明るい、でも全体としては暗い塊」には、ならないんです。
なのでブリクサは、前景の草原の延長で使える、ちょっと背があってロタラとかの下の方とかを隠すのに丁度いい…後景と前景のつなぎに使うのに良い感じ。
そうやって使うと全体が明るめになる。
だからと言って、後景のスグ手前に押し付けるように植えると、これがもう失敗のもとです。
ブリクサは、よく簡単だって言われるけど、溶ける時はあっさり溶けます。溶けちゃう原因は幾つかありますが、しっかり定着するまでに、以下の条件に置かれると溶けやすいと思ってます。
●上空を塞がれる。...光量が足りない。
●水流が強すぎる。
●根本が塞がれている、根本が水流の都合上汚れやすくなっている。
根本の通水性が悪い。
●底床の養分が足りない。
要するに、開けたところにポンって置いてやると、上手く育ちやすい
ってことですね。
過去、最初にどこかに押し付けたのは…スグ近くに背が高くなる水草があるところに置いたのは、大抵上手く行かなかったです。
しっかり定着してからなら…後から後ろが塞がれた…なんてのは、割りと大丈夫なんですけどね。最初に塞がれてるとダメになりやすい。
少しでもCO2入ってて、ソイルで、開けたところに植えてあって、やたらと水流が強くないって状態なら、まず育たないってことは無いとは思うのですけど、低い背でボリューム感がある感じに育てるには、底床肥料がかなり重要らしいです。窒素やリンですね。
ショップで売っているのは、ショップの水槽をリセットした時に放出したものとかじゃない限り、ほぼ間違いなく水上葉のです。
ブリクサは、成長遅くて、水上葉から水中葉への転換に割りと時間がかかるので、ここがまず鬼門になります。この段階で周囲を塞ぐみたいなことをすると溶けやすいわけですね。
もっとも私が初めて買ったブリクサは、近所のホームセンターに売ってた奴なんですが、これは、いつからここに置きっぱなしだったの?っていうくらい、かなり長い根が出ちゃってて、完全に水中葉化してて、だから、割りと適応も早くて、別に何も難しいところなんて無い水草だな、ものすごく簡単じゃん!って思っちゃったんですけど。この経験を元に甘く見たのがその後の失敗のもとでした。
むしろ、ショップで売ってるブリクサは、たまに痛んでるのもあるので、よくチェックした方が良いですよ。
なんか状態良くなさそうだな…でもまーいいか!その分メチャクチャ安くしてくれたから…なんて思って買ってきて、鉛巻きのところを外したら、茎が黄色く…ちょっと腐りかけ?みたいになってたり。
茎が短いのを買ってきちゃうと、しっかり植えたつもりでもスグに浮いてきちゃうんですよね。もうそういう場合は下葉をけっこう切って茎を長くして植えるとかしないと、1週間くらい、「あっ、また浮いてるよ」ってことを繰り返すことになったりします。
その後は、環境によるのだろうけど、1−2週間で、ちゃんと根が出てきて、新葉も出てきてって感じになるのですけど、その後さらに1ヵ月くらいは、エビに刻まれた古い水上葉がいつも浮いてるって感じが続きます。1ヵ月過ぎて、ちょっと軽く引っ張ってみてしっかり根付いているのを確認して、新葉も沢山出てれば定着したってこと…って判断してます。
よく「ブリクサは歴とした有茎草」とか書いてあります。
確かに良く見れば、中心の茎がしっかりあって、そこに段々に葉が付いて行く構造になっているし、根本からランナー伸ばして増える訳でもないですね。縦に伸びて、枝分かれしていく。
ブリクサでも、スグに縦に伸びていくブリクサヴィエティとか見ると、めちゃくちゃ分かりやすいけど、ノボグイネエンシスも詰まってるだけで同じ構造ですね。
でも、ロタラとかルドウィジアとかの典型的な有茎草が殆ど真正双子葉類であるのに対して、ブリクサは、単子葉植物綱トチカガミ目トチカガミ科スブタ属。
あえて近縁をむりやり挙げるなら、オモダカ目(サジタリア)の系統が近いですね。この系統で水草化したものは、(一概には言えないけど、その多くは)水中適応度が極めて高くて、泥化した底床に強力に根を張って、比較的低CO2でも大丈夫な連中が多く存在しています。
ちなみに殆どブリクサと関係ない話ですが、種子植物で唯一海に進出しているのは...つまり海草(海藻じゃないです)は、全てオモダカ目です。アマモの仲間ですね。
ブリクサも泥化した底床が嫌いじゃないし、とにかく根張りが良くて底床内環境維持に役立ちます。…肥料分が底床内にたっぷりあれば、ですけど。
泥化したところが嫌いじゃないし…という表現は間違ってますよね。嫌いじゃないじゃなくて、自生している場所は、つまり本来好むところは水田のような泥のところ。
ノボグイネエンシスだと成長が遅めなので肥料の効果がスグに分るというわけじゃないですが、ヴィエティだと、ものすごく分かりやすいですね。
肥料が切れてくると、スグにシナシナになっちゃうし、そこに施肥すると、一気に元気になって、ぐんぐん葉を伸ばす。
なんにせよ、しつこいですが、肥料分が大事です。
ちなみに、この写真のブリクサの根本にはアクアフローラが入ってます。
ブリクサの葉色については、ライトが強いと赤くなるとか、肥料やソイルで色が変わるとか、いろいろ言われてますね。
たしかに、水槽内の違う場所に植えたブリクサの色が、光量は殆ど違わないはずなのに、けっこう違ってたりすることもあるし。
でも、何が色を変えさせているのかは、よくわかりません。
軽やかで鮮やかな明るい緑色がイチバンだけど。
ただ、はっきりしているのは、肥料分が足りないと明るい緑色の葉にはならないですね。
葉色が悪くなってきた時に根本に肥料を追加すると、パッと明るい葉色に変わっていくということを何度も経験しています。
pHや硬度は、上げ過ぎると調子を崩すとかってよく書いてあるけど、(その通りなのかもしれないけど)私としてはpHとかより、根本の通水性や汚れを溜めないことの方が余程重要っていう印象です。
もちろんブリクサの自生地考えれば、アルカリ寄りよりは弱酸性の方が良いに決まってるのでしょうけど。
ノボグイネエンシスとパッと見区別が付かないブリクサに、エキノスペルマ(スブタ)があります。
これ、私は売っているのを見たこと無いけど、こっちの方が殆ど茎を伸ばさないで葉を密に出すから、草姿は美しいらしいですね。でもってお値段もノボグイネエンシスよりずっと高い。
これを水槽内で長期維持するのは、かなり難しいらしいです。
水草コレクションマニアとかでもなきゃ、必要ないですね。
ちなみに、日本の水田に自生しているブリクサは、エキノスペルマです。
ブリクサも条件が良いと円形ドーム型にどんどん巨大化していきます。
あまり大きくなってくるとトリミングするしか無いわけです。
ブリクサのトリミングは、いろいろある水草の中でもいちばん難しいのじゃないでしょうか?
こいつは、構造的には所謂 有茎草なので、枝単位で切っていくしかないわけです。
巨大なドームも、一本の茎から均等に葉が出ているわけではなくて、中では幾つも枝分かれしているわけです。
巨大化してまず何が困るかというと、やたらと広い面積をとって周囲の前景草とかに影をつくっていってしまうことですよね。
だから、通常は、まずサイドの枝をカットしようとします。
そうすると、綺麗なドームも円柱のように...上に向いた葉ばかりになってしまって、カッコワルイんですよね。
なら、どうしたら良いかというと、カッコ重視で行くなら、結局差し戻ししか無いです。
全体を根本でチョキン...というか、ブリクサの茎の性質上簡単にポキっと折れるので、丸ごとむしっちゃって、枝ごとにバラバラにして、一回り小さなドームに見えるように組み合わせて植え直す。...これしか無いです。
私は、よっぽどガマンならない状況にでもならない限り、こういうことはしませんけど。
サイドの枝を切り落とすだけで我慢します。
何故かというと、ブリクサの魅力として、その草姿だけじゃなくて、健康なブリクサが地中に強力に張り巡らす根についても期待しているからです。底床内の嫌気化予防に貢献してくれているのではないかと考えているわけです。
大元の茎をカットしちゃったら、その根がダメになっちゃいますからね。
枝を落とすときの注意として、細長いハサミを茂みの中にそっと差し込んで静かに枝を落とすようにしましょう。
ブリクサの茎は、けっこう柔軟性が無くて脆く、あまり揺さぶったりすると傷みやすいんです。ちょっと強めに力を加えるとポキっと行っちゃう。
なので、茂みをかき分けかき分け枝の根元を探してカットなんてやってると、元の茎が傷んでしまったりして、全体が元気をなくしてしまうということがあるので注意しましょう。