リン酸除去剤

2017.7.24

 

他のページでも何度も書いているとは思いますが、リンは水草にとって極めて重要な多量必須元素の一つですが、同時に水槽水中にリン酸として溜まりやすく、過剰に溜まっていくといろいろとやっかいな自体を引き起こします。

私としては窒素分(硝酸)よりもよほどやっかいな存在だと思っています。

窒素については他でも書いているように、大量の水草を高成長させている場合はむしろ足りないくらいになることも多いと思います。
...もちろんこれはバランスの問題で大量に魚を飼っていて大量のエサを投入していれば簡単に窒素過多になるわけですが。

 

窒素は足りないくらいになりやすいのに、なぜリンは余るのか?

これは、魚に与えるエサに含まれる窒素:リンの割合と、水草が消費する窒素:リンの割合が異なるからです。
例えば、水草のリンの要求量は、例えば畑作物などと比べれば遥かに少ない。だから、園芸用の肥料とか使うと酷いリン過剰になるわけですね。

 

また窒素分は最後は殆ど硝酸になるので水換えで排出できますが、リンはアルカリ金属類や有機物と反応して難溶化したりして水槽内に蓄積していきやすいとも言えます。これらを微生物などが分解すればまたリン酸が水中に放出されます。

 

リン酸が過剰になると何が起きるか?
非常に多ければ、大きくpHが下がっていきます。酸ですから。

GHも下がりますよね。水中のカルシウムと反応して不溶化させるので。
pHが下がったなと分かりやすく数字に出るほどじゃなくても、リン酸が増えていくと各種のコケが出やすくなります。

特に黒ヒゲや灰色のサンゴ状ゴケなどが出やすくなります。

これはイヤですよね。

 

リン酸は水に溶けるわけですから、

  • 水換えで排出する。
  • 水換えを頑張っていても糞などが溜まっていればどんどん溶出するから掃除をする。
  • 大量の水草を高成長させる。このためにエサで供給できる以上に窒素とかも添加してバランスを取る。

などのやり方がリクツとしては考えられるわけですが、

まー難しいです。特に最後のやり方とかは...私も一時頑張っていましたが、ちょっと添加履歴とかを失念したりしてバランスを崩すとすぐに緑藻だらけになったりしますし。

 

水中のリン酸を除去する方法としては、前掲のもの以外にもあります。

リン酸を何かに反応させて不溶化させちゃえば良いわけですね。

リン酸は、鉄、カルシウム、アルミニウムなどのイオンと反応して不溶化します。

これらを(製品によって何を使っているかは異なると思いますが)例えばフィルターの濾過槽などに入れてリン酸を吸着除去するのがリン酸除去剤です。

 

リン酸除去剤

 

私は、エーハイムのものを使ってみました。

 

黒ヒゲやサンゴ状ゴケが出ていた時に使ってみたのですが、しばらく使っていたら見事に出なくなりました。

これらが完全に消えた後で、水草の育ち具合とかがイマイチなので、リン酸除去剤を撤去したら、その数日後から黒ヒゲがポツポツと現れ始めるという分かりやすさ。

 

エーハイムのリン酸除去剤は、ケイ酸も除去するということですし、ケイ酸と黒ヒゲの関係もよく言われていることですから、「リン酸を除去したから黒ヒゲが消えた」と断言できるわけでもないですけど、

過去にリン酸を含む液肥(ケイ酸は含まれていない)を使った時の黒ヒゲの増減とかを考えれば、リン酸の影響が大きいと考えています。

 

まーリクツはともかく結果的には効いています。

 

先程、水草の育ち具合がイマイチ...と書きましたが、

リン酸が減ると以下のような症状が水草に出てきます。

  • 新芽の出が悪くなる。
  • ランナーの出が悪くなる。ランナーの伸びも悪くなる。
  • 這う水草が浮き上がりやすくなる。
  • リン不足が酷くなると、古葉(下葉)が黄化したり黒化する。赤紫色になることも。

また、水中のリン酸を除去するわけですから、水中からのみ栄養を吸収している水草ほど影響は大きくなります。

例えば、モスやシダ類は育ちが極端に悪くなります

 

肥料分は底床から根を通して取る割合が高いと言われているグロッソが、それまでランナーを出していたのに、リン酸除去剤を使い始めてから殆ど出さなくなり、リン酸除去剤を撤去したらランナーを出し始めたなんていう経験もしています。

 

それとエーハイムのもののようにケイ酸も除去するのであれば、

ケイ酸は珪藻を代表例にコケと関係が深いもので、多くの水草には必須元素ではないわけですが、ヘアーグラスだけは別で、ヘアーグラスにとってはケイ酸は必須元素です。なのでヘアーグラスの成長に影響が出るかもしれません。...私は確認できなかったですけど。

 

リン酸除去剤を水草水槽で使うには、このあたりの水草への影響も意識して、リン不足症状が気になるようになってきたら...同時にコケが気にならない程度になってきたら使用を中止するってことをアタマの片隅に置きつつ使いたいですね。

 

リン不足は、水槽内では他の必須元素不足ほどには分かりやすく酷いことにはなりにくいです。

なんか育ちが悪いなーって程度です。

もちろん多量必須元素とされているくらいなので極端に少なければ問題でしょうけど、毎日エサを投入しているようなら、そういうことはまず起きないはずです。

 

先に書いたように、リン酸は鉄やカルシウムやアルミニウムなどと反応させて不溶化出来るわけですが、

例えば、鉄液肥と反応させると、リン酸鉄が出来てこれが水槽中に舞うようだと葉に付着すれば葉を痛めます...つまり植物にとっては毒です。

カルシウムと反応させて出来るリン酸カルシウムは、毒ということはないですけど。でもカルシウムをやたらと追加したいということはあまりないですよね。そもそも液肥化させているのは、ほぼ酸と反応させたものだから使えないし。アルミイオンも毒性を持ちますね。

ってことで、濾過槽などに入れてリンを吸着させて後で取り出せるものを使うべきですよね。とにかく不溶化させれば良いってことじゃなくて。