水槽内のレイアウト
主に管理面を意識してのコツ
ここで書き留めているのは、「美しいデザイン」ではなくて、主に管理面を意識したレイアウトの考え方・コツについてです。
「美しいデザイン」は、参考になる写真がネット上に沢山あるだろうから、そっちを見て下さい。
またそもそも水槽をどういう場所にどう置くべきかとか、照明などの機材配置などについても触れません。
- 水草の性質を意識した配置
- 前景と後景のつなぎ
- トリミングなど管理のしやすさを意識した配置
- 水流のデザイン
- 底床面・底床内のデザイン、山の作り方
水草の性質を意識した配置
背の低い水草を前に、大きくなる水草を奥に...自然に水槽全体を眺められるようにするなら、そうするしかないわけですけど、実際には成長速度の差や環境によっての草姿のあり方なども意識しないと、後で管理が面倒になります。
例えば、色以外は見た目そっくりのグローン ロタラ、ロタラ ロトンディフォリア、ロタラ インディカも、実際に植えると育成環境にもよりますが、成長速度も草姿もかなり異なってきます。
光や水流や肥料など他の条件が同じなら、成長速度は、
インディカ>ロトンディフォリア>グリーン
の順になります。この差はかなり大きいですよ。
つまり、手前にインディカを植えてしまい、奥にグリーンロタラだと、常に奥が見えない状態になっちゃうわけですね。
それにそもそも、インディカは奥に植えて、背を伸ばして、光源に近づけることで、より赤くなりますから、より奥に植えることが理にかなっているわけです。
それにグリーンロタラは状態が良いと、枝垂れます。斜面を駆け下りるように這ったりします。
こういう性質があるわけですから、インディカより奥に植えるなんてパターンはちょっと考えにくいわけです。
前景草も単植で行くならともかく、混植するのであれば、背の高さ、成長力の違いが、けっこう重要になります。
単純に背の高さ順に並べれば、低い方から、
キューバ < ニューラージパールグラス < グロッソ <
ショートヘアーグラス < ウォーターローン...という感じになると思いますが、
例えば、グロッソとニューラージパールグラスだと、どちらも環境があっていて全開で成長したとしたら、圧倒的にグロッソの成長の方が早くて、グロッソの部分ばかりに厚みが出てしまいます。
それとニューラージパールグラスは潜るように這うことも多いですし。
ショートヘアーグラスは、環境によっては平気で10cmとかになりますが、充分な光量があれば非常に低い背のままで居てくれますし、そもそも成長がとても遅いですよね。
グロッソも光量が無いとものすごく背が高くなったりもします。
それから成長力がある水草の手前に、光量の要求が大きい水草を置いてしまうと、ちょっとトリミングをサボっていた時などに、手前の水草を覆ってダメにしてしまうことがあります。
例えば、ロタラの足元にブリクサを植えたりすると、(水回りが悪くなることも相まって)溶けちゃったりすることがあります。
ブリクサが充分に水槽環境に馴染んでいると、後から覆われても簡単には溶けないですけど、水上葉を新規導入したりした時はあり得ます。
前景と後景のつなぎ
例えば、奥に成長力があり背が高くなる有茎草、手前に背の低い前景草を植えると、
奥の有茎草が伸び上がっていった時に、下のほうが暗く・またスカスカに見えます。
長く維持していれば、差戻しでもしないかぎり、どうしても旧葉部は汚れていきますし、葉を落としたりもしていきます。
そこはあまり見せたくないなということで、前景と後景の間を上手く繋いでくれる水草を植えることになります。
隙間から奥のソイルが見えるのもイヤですし。
もっとも実際の草原と森の境目では、木々の幹が見えていることが多いですけどね。
このつなぎ方はいろいろ考えられます。
- そもそも奥を斜面にしてしまいグリーンロタラなどを這わせてしまう...前景に進出させることで馴染ませる。
- ブリクサなどの中くらいの高さになる水草を前景と後景の間に置く。
- トリミング次第で背の高さの調整が自在な...前景にも中景にも使える水草を置く。
例えば、ウォーターローンやニューパールグラスなど。テネルスなどを密植するのもあり。 - オークロを使う。低く這わせれば前景に馴染み、後景に絡まるように這い上がらせれば、自然なつなぎになる。
- 暗いところにも這い進んでいく力が強い水草を前景に置く。つまりグリーンロタラの逆で、前景から後景を自然に侵食させる。
ニューラージパールグラス、ウォーターローン、グロッソなど。
ただしグロッソは底床の肥料分が足りなかったりすると暗くなり始めたところから急に立ち上がって壁をつくってしまうこともあるけれど。 - 自然に繋ぐなどということはそもそも考えずに、石や流木などで、バッサリ明快に分離してしまう。
明快に分離してしまえば、「繋ぎが不自然」なんてことも気にならなくなる。
ざっとこんな感じですか。他にもきっとあるでしょうけど。
唯一気をつけたいのは、中景の作り方で、あまりに後景への水の流れを止めてしまうような作り方をすると、以下の様な問題を起こしやすくなるということですね。
- 水流のデザインにもよるけれど、残餌などのゴミが溜まりやすくなる。
- 奥の有茎草の腰から下のほうが傷みやすくなる。
トリミングなどの管理のしやすさを意識した配置
例えば、右利きの人だと、右側に山があったり、複雑なかたちを維持しなければならないようなレイアウトがあると、とってもトリミングしずらいですね。
もう割りとしょっちゅう切ることになるのだ。どうせ切らなければならないなら、簡単に切れるほうが良い。っていう割り切りも大事です。
私は、細かいところはともかく、ロタラとかを切る時は、文房具用の刃先が割りと長いハサミでバッサバッサ切っちゃいます。水面に浮いているゴミ掃除まで、全部通して30分掛からないくらいで切っちゃいます。
例えば、ロタラの林の中にハイグロフィラ・ピンナティフィダとかを入れて、シダっぽく葉っぱを出させようとか...そういう余計なことを始めると、トリミング作業時間がいっきに増えて、だんだんトリミングがイヤになります。
そういうことをしたら、もう気にせず切っちゃう。
それがイヤなら最初から、トリミングが手間になるレイアウトはしない方が良いですね。
水流のデザイン
繰り返し各所で書いているので、水流の重要性について改めて書きませんが、とにかく最初に、水槽全体に上手く水が回る...止水域ができないようなレイアウトを意識するべきです。
実際に稼働させ始めた後で、ソイルの濁りが残っているならその濁りの動き方で、もう水が澄んでしまっているなら、割り箸の先に細い糸でも付けて水槽内の各所に置いてみて、水流の動きをチェックして、もしほとんど水が動いていない場所があるなら、見直しみてみたほうが良いです。
水流については、あと特に挙げるなら
- 一般的に水流がよくあたる場所ほど(特にCO2の直接添加をしているとなおさら)水草は成長します。
- 水草も水流が好きですが、コケも大好きです。
特に黒ヒゲは。黒ヒゲへの対処を考えた時に、まずは切っちゃうのがいちばんなので、強い水流が当たる場所に、切りづらい・頻繁に切ることを躊躇するような水草を置かないほうが良いです。
成長力があって切ることにためらわずに済む水草なら黒ヒゲが出ても、即カットしちゃえば良いですし、そもそも成長力がある水草には黒ヒゲがつきにくいというのもあります。 - 強い水流が苦手な水草があります。
例えば、ブリクサは強い水流で細く薄く柔らかい水中葉がかき乱されるのを嫌います。かと言って根本が止水になるようだと、それはそれで良くないのですけど。
他にも、例えばスックと立ち上がるルドウィジアとかが強い水流のラインの下に植えてあると、いずれ成長した時に台風でなぎ倒されたようになっちゃいますよね。 - 水流が確実に全体を回るようにデザインすると、必ずゴミが溜まりやすくなる場所が出てきます。
水流が急減速するような場所はどうしてもそうなります。
そういう場所には、まずは、汚れを捉えやすい水草を置きたくないですよね。例えば、ウィローモスとかは水流があると非常にゴミが溜まりやすい。ほとんど物理フィルター状態。また、何かが密に生えているのもゴミを溜めやすくしますよね。
次に掃除しやすい...プロホースを押し付けても傷みにくいような水草にしておきたいですよね。繊細な草姿の水草とかはやめておいたほうがいい。
それから、そういう場所に汚れに弱い水草を植えないようにしたほうが良いですよね。
ブリクサもそうですし、ミズハコベとか「比較的新しい水を好みます」なんて説明書きにあるような水草は大抵根本に残餌が溜まったりするのを嫌がります。
これらを全部完璧に意識したレイアウトなんてなかなか出来ないですけど、少しは意識したほうが良いですよということですね。例えば、やりきれなければ、ゴミが溜まりやすいところは意識的に頻繁に掃除しようとかでも良いわけですし。
最後に水流が巡ってくる給水口の部分は、頻繁にトリミングをしていたりすると、トリミングクズとかがとても溜まりやすくなるわけですけど、この掃除がおっくうになるような給水口の位置は良くないですよね。
例えば、オークロのような絡まりやすい水草が密生しているとかサイアクです。
私は、給水口は隠したいので、周囲に背の高い水草は植えて前からは見えないようになっているけど、ストレーナーのあたりはスカスカですし、さらにストレーナーの下の底面には石を入れています。
ソイルを巻き込みたくないというのもありますが、集まったゴミが簡単に吸えるようにって配慮です。
底床面・底床内のデザイン、山の作り方
- 底床面は正面から見て水平線を描くようにするにせよ、滑らかなカーブを描くようにするにせよ、奥に行くほど厚みを付けるようにしたほうが見やすいですよね。
特に前景エリアが広い場合は、奥を上げていてむしろ平らに見える...本当に平らだと、後景草との関係で奥に行くほど下がっているように見えてしまいます。 - ソイルを一種類でやらなくても良いのではないか?
例えば、前景はグロッソなどが早くよく這って欲しいので栄養豊富なソイルを使う。さらに、ヘアーグラスなどの泥に近い底床が好きな水草にはパウダータイプを使う。
でも、例えばすべてをパウダータイプにすると、当然、底床の劣化が早くなるので、ヘアーグラスを植えるところだけにする。
特に成長力が欲しくないところは、栄養が少ないソイルを使うことで、立ちあげ初期のソイルからの養分溶出を少なくする。...といった使い分けもアリだと思っています。 - 底床内は、水槽の寿命が短くならないように、詰まりを防ぐ:嫌気化を防ぐ工夫をする。例えば、底床の深層に厚めにパミスを入れるなど。
- 地中深くに縦横無尽にランナーを張って、どこからでも芽吹いてしまうような水草...サジタリアの系統、クリプトコリネの系統、ニムファの系統など...をコントロールしたい場合は、前景にランナーが進出してこないように、底床内に仕切りを入れてしまう。
例えば、プラ板、竹皮、樹の皮、薄い板... 木材だと防腐剤などが染み込ませてある可能性もあるので、気をつけないとキケンだけど。
私自身は、根張りの良い水草は底床内環境の維持に役立つと考えているので、進出してきて芽吹いたらカットしちゃうだけだけど。 - ソイルで山を作るときには、有茎草などを大量に差し込めばほとんど崩れない。下の方から、順に斜めに差し込んでいく。
ただし、それでも少しは崩れてくるので、ソイルの粒が前景草の上に雪崩落ちて来たりしないように、山の麓の部分だけは、適当な流木や石を入れて土留を行う。
(私自身はやったことがないけれど)前景草の類で山を・斜面を覆いたい場合は、屋外で前景草の水上葉育成を行って、前景草のシートをつくって、これを斜面に置いていく。竹串などを刺して充分に根張りするまで斜面に固定。...水上葉のシートづくり自体は簡単。(ブログの方などを参照)
あるいは、それほど崩れやすいような急斜面でなければ、ヘアーグラスのような根張りが良くて土留にもなる水草をたっぷり混ぜ込んで植える。ヘアーグラスは思いっきり深く植えても大丈夫だから、有茎草を沢山斜面に刺すのと同じ効果が得られるハズ。
最も無難なレイアウト
フツーの60cm規格水槽とかで、左右のどちらかに排水口を設けて、ロタラなどの高成長する有茎草と、前景草でかたちをつくるのなら、
最も無難なレイアウトは、
左右の真ん中あたり(シンメトリーがイヤなら3:2で左右分割できるところとか)の後方にソイルの盛り上がりをつくって有茎草を植えて
その他にグロッソなどの前景草を置く
っていうパターンになると考えています。
このカタチは、私としては狙ってやったことはないのですけど、「結果的に」このカタチにしていることがよくあります。
ロタラとかが生い茂り過ぎて、水の回りが悪くなってきた時とかに、ひとまずロタラの茂みの端をバッサリ切って、水の回りを回復させるわけです。
で、結果的に中央部にロタラが立ち上がったように残るってわけ。
このカタチにした時のメリットは、
・水流を維持しやすい。:水の流れが止まりやすい左右の奥のところの水流を維持しやすい。
・ロタラが左右に水面を這うのでトリミングのタイミングを少しは長く取りやすい。…もちろんグリーンロタラのように枝垂れるものは別だけど。
・左右も前景草がガラスのフチに置かれるので、反射光でよく育ちやすい。
「好きなレイアウト」が特になくて、ひとまずなんでも良いなら構造面から出来るだけ安全に行きたいという場合には、良いと思いますよ。