なぜ化学肥料漬けの作物栽培はダメなのか?

最初に、幾つか断っておくと、

まず、私としては「化学肥料を使うことがダメ」という気は全くありません。化学肥料無しで現代の農業が成立するなんて微塵も思ってないです。

それと、私は農業やってるわけじゃないし、それについての専門家でもありません。あくまでも水草水槽をやりながら、ついでに農業関連についてもけっこう調べながらやってたので、そのあたりで気がついたことをまとめて見ようと思っただけです。

最近、農業関連と接点のある仕事も出てきたりもするし。

まーそんなわけで、もしかしたら的はずれなことを書いているかもしれないけど、そういうことがあったらひとまず許してください。ついでにどこが的はずれなのかを教えてもらえたらとてもありがたいです。

 

人工物で作られた食べ物が良いわけがない...なんていう思い込みだけで、オーガニックなら良くて、そうでないならダメなんていう幼稚な見方はしたくないけど、その真逆もまた正しくいとは思えないですよ。どちらも物事を単純化しすぎている。

できれば、このあたりのバランスを持った見方をしたいものだという思いもあります。

 

私としては、要点は以下の3つだと思っています。

  • 土壌への炭素供給問題:土壌生物の活性問題
  • 微量必須元素問題
  • 環境汚染問題


まずは、炭素供給問題ですけど、

作物自体は、炭素は空中...CO2から摂るので土壌中の炭素が無くてもひとまず育つわけですけど、土壌生物にとっては炭素源が重要です。

土壌の適切な構造...団粒構造の維持であったり、深層の分解を進めてミネラルを補給したりとか、様々な点で土壌生物の活動が重要なわけですが...つまり作物が健全に育っていく環境の維持には土壌微生物の役割を無視できないわけですけど、化学肥料ばかりをやっていると炭素源が減る一方になってしまって、土壌生物を維持できなくなってしまうわけですよね。団粒構造が維持できないと、適切な空気・水分の保持、陽イオン交換による養分の維持などにも問題が出ますよね。

 

次に、微量必須元素の供給問題があります。

化学肥料は、主に、窒素・リン・カリ・カルシウム・マグネシウム...などの多量・中量必須元素を補うものです。

もちろん微量必須元素を補うものもあるわけですが、実態としてはほぼそうですよね。

多量・中量必須元素は、ちょっとくらい多めに施肥してしまっても深刻な問題は引き起こさないわけですが、微量必須元素は多めに施肥してしまうと深刻な問題につながるものも多いですよね。

しかも、作物の種類やもともとの環境で、適量がかなり異なってきます。人工的に適量をコントロールして施肥するというのが、今のところ現実的にけっこう難しいわけです。

微量必須元素が足りないという問題は、かなり時間が経たないと出てこないので見落とされがちです。それまで化学肥料だけで上手くやってこれたのに何故ダメになってきたのか?がスグには分からない。

しかし、微量必須元素が足りないという問題は、堆肥などの有機肥料を適切に使っている畑では、まず出てこないわけです。

化学肥料漬けの畑で問題になる。

その材料コスト・管理コストを考えたら、有機資材を組み合わせたほうがずっと合理的です。

 

最後に、環境問題ですが、

化学肥料は、最近は緩行性・遅効性のものも増えてきたとは言え、基本的には水溶性で即効性のものが多いわけですよね。
極めて流亡しやすい。流亡するから定期的に多めに施肥してしまう。

流亡しやすくなるのは、前述の炭素分不足になる問題で土壌の団粒構造が失われやすいということとも関係していますよね。

作物が使わない肥料分が流亡するということは、そこに連なる地下水・川・海を富栄養化させてしまう。汚染するということです。

もし硝酸過多の地下水なんて飲んでたら大問題ですよね。雑菌も増えるだろうし。

どうしても多めに施肥することが基本になると、作物自体も硝酸過多になったりして...硝酸過多の作物が健康に「良い」とは間違っても言えないですよ。

 

いろいろ言い出せば、化学肥料漬けの畑の問題ってのは、まだまだいろいろ言えることは多いわけですけど、おおよそこんなところが特に問題なのだと思っています。

 

そうだ、あと一つ。

化学肥料は、空気を原料にする窒素肥料や、殆ど残量を意識する必要が無いほど豊富にあるカリ肥料の原料などと違って、リンは実態としてその殆どは生物由来でリン濃度が高められた鉱石を使っているわけですよね。

でもって、だから、資源の枯渇が心配されるものです。

もちろん例えば生活排水からリンを取り出す技術とか、いろいろ新しいやり方は出てきてはいるけれど、当面やっぱり燐鉱石に頼らなきゃならないわけです。

本来、植物は枯渇しがちなリンを菌類との高度な共生によって効率的に手に入れたりしていたわけですが、化学肥料漬けの畑ではこの関係を断ち切っちゃうんですよね。

これも長期的に見ていった時には大問題ですね。

 

もちろん、化学肥料だって進歩を続けているわけで、いつまでもこういう状態だということは無いとは思います。

それでも、現状ではこういう問題があるし、有機資材を組み合わせて使ったほうが合理的って場面の方がはるかに多いってことですね。

 

これ、殆どそのまま水草水槽にも当てはまると思っていて、短期育成だけならともかく長期育成考えると、液体の化学肥料ばっかり使うのは難しいなって思ってます。

最近、炭素・微量元素問題を意識して、腐葉土エキスを使うのを重視しているんですよね。

 

短期育成なら問題が出にくいというのは、野菜づくりと共通しているんですよね。

果樹栽培とかだと、長期的な影響が重要だし、その結果も少しづつ見れるから、化学肥料漬けってことにはなりにくいのだけど、

野菜は短期勝負で、結果が悪いと収益に直結するし、比較検証なんてしていられないから、どうしても化学肥料を重視し過ぎちゃう。それが良かったのか悪かったのかも、毎年天候条件などが違うわけだから検証しずらい。
つまりは、水草水槽の短期リセットを繰り返しているのと同じですから。

水草水槽と違うのは、水草水槽は土ごと...ソイルごと入れ替えるけど、野菜づくりは、土を丸ごと入れ替えるわけじゃないってことですよね。せいぜい掘り返すくらい。
だから、やっぱり実は長期的には影響が出てくるわけです。
でも、その原因が分かりにくい。

かなり丁寧に土壌分析でもやってみなきゃ原因が分からない。大抵の人はそこまでやらない。

ってことで、なかなか化学肥料漬けの問題から抜け出せないんですよね。

 

あーもちろん、実際の農業の現場では、有機肥料もかなり使われていることも理解していますよ。

これは、そのあたりをひとまず無視して話を単純化したもですから。

 

ところで、オーガニックとか有機とか何度も書いちゃいましたが、これも今となっては本当にわけの分からない言葉ですよね。

法律上の定義とかってことじゃなくて、もっと根本的な意味が。

 

結局のところ炭素化合物なら有機化合物ってことなのか?
...みたいな。

 

生物由来とか、バイオマス由来とか表現したほうが混乱しなくて...曖昧にならずに良いのにね〜。

 

結局、今やオーガニック◯◯、有機◯◯って、人工資材を使ってませんってニュアンスなんですよね。わざと曖昧にしてバカを騙すズルさを奥底に感じちゃうのは私だけ??

硝石とか石灰石とかグアノとかを使うのは...これらは自然が生み出すもので、どれも生物由来と言えるものだけど、これはどっちなんですかね?

法律上の話じゃないですよ。もともとオーガニックとかって言葉を使うのが大好きな人たちにとっての定義としてどうなのか?ってことで。

 

 

コメント: 0