水流の調整

他のページでもところどころで水流の重要性について書いていますけど、私としては水流を意識することはかなり重要度が高いことだと考えていますので、他のページと殆ど重複した内容になってしまうかもしれませんけどあえて頁をたてようと思います。

 

水草水槽を観察していると、照明が点灯しCO2添加が始まって最初に水草が気泡を上げ始めるのは、水流がよくあたっているところのはずです。水槽内にディフューザーを置いていればその近くの水草から最初に気泡をあげるということもあるかもしれませんが、フィルターのパイプに強制添加していればまず間違いないですね。

何故そうなるのかと言えば、当然、水流がCO2を運んでくるからですね。

最初に気泡を上げるというだけでなく、水草の成長自体も水流が当たる場所とそうでない場所ではかなり差が出てきます。

前景を水流が舐めて走っているような場合は、前景草の成長に一旦差が出始めると、突き出たところはよく水流を捉えてますます成長し、凹んだところは水流が行かずに成長が遅くなるなんてことも起きます。

 

水流は、CO2だけでなく、酸素、熱、様々な栄養を運んできます。水槽を体として見るなら、水が流れる通り道が血管...循環系ですね。

 

 

自然の中でも川の中などを見た時に、流れが強めのところにも意外に水草がよく茂っていて、淀んでいるところの水草が少ない、魚も水が良く動いているところやその近くの流れがとろっとしたところに居るということを釣り人なら知っていると思います。
もちろん本当に急流というところには水草は無いですけどね。
水が少しは動いているところの方が多いということです。

一見止水に見える湖沼でも、風や昼夜の温度変化、流れ込み、水中の湧水などで水はかなり動いています。

そして流れがあるところ、流れが当たっているところに魚は居ますし、水草もよく茂っていたりするわけです。

 

水が当たるところに居るのは魚ばかりではなくて、バクテリアの繁殖にも水流が必要です。ソイルに水草が植わっている水槽では濾過槽内に負けないくらい水槽中に...特にソイルの表面などに硝化バクテリアが繁殖するわけですが、水流のあたり具合でその繁殖効率が変わってしまうわけですね。栄養:窒素源と酸素の供給が必要ですから。

 

もちろん水草も魚も、強い水流を好むもの、苦手なものが居ます。

極端な例だと、グッピーやベタはあの大きなヒラヒラした尾びれでは強い水流の中では泳げませんし(特にベタはちょっとでも流れがあるのを嫌がりますよね。止水の魚なので)、ヒラヒラした葉をロゼット状に展開するクリプトコリネとかも自然の中では比較的水流が弱いところに生えているらしいですね。

もともと渓流にも進出するくらいのヤマトヌマエビは水流が強いくらいを好みますけど、溜池とかの止水に生息していることが多いミナミヌマエビは、強い水流で落ちるようなことは無いにしても繁殖はしにくくなりますね。

 

このあたりは、いちおう水槽に入れる前に、水流を好むのか苦手なのかは調べておくべきだと思いますけど、ざっくりカタチを見ればおおよその想像は付きますよね。

サジタリアの類とかの細長い葉を疎らに付けるものとかは、比較的強い水流で問題無いですし、大きな平たい葉を付けるものは...極端な例だとロータスとかは水流が苦手ですよね。細い葉でも比較的密にはえているブリクサとかは強すぎる水流は苦手ですし。

魚も鋭いカタチ、薄っぺらい形、底に張り付くもの...などは強い水流でも大丈夫なことが多いですし、面積の大きなヒレ、丸みのある体のカタチのものとかは強い水流が苦手なことが多いですよね。

生き物のカタチには理由があるわけで、特に水流の好みとは関係が深いと言えます。

エビの場合は、ヤマトのような繁殖に塩水が必要な「小型卵」を生む両側回遊性のものは当然河川遡上能力が必要なので殆ど全てが流れに強いけれど、ミナミをはじめとした「大型卵」を生む陸封型のもの(水槽内で繁殖できるもの)の殆どは水流にあまり強くはないと思っておけば間違いないでしょう。

 

強い水流が特に苦手な水草や魚が入っている水槽で洗濯機の中のように水を回してしまっては、中のものを痛めてしまう...魚は疲れ果ててしまうかもしれませんが、特別に弱いものを入れていない限り、「ちょっと強すぎるかな?」ってくらいでも大丈夫ですから。

むしろ、水槽の中に殆ど水が止まってしまっているところが出来てしまうほうが問題です。

 

水流は、以下の点に留意して調整しましょう。

  • 流れが殆どなくなってしまうところをつくらないこと。
    セッティング時の濁りが出ている時なら水の動きが見えますね。そうでないなら、割り箸の先に柔らかい糸でも付けて水槽内各所に置いてみて糸の動きを見て水流を把握するとか。
  • 上下の水の動きを付けましょう。
    上から下へいっきに落としこむとか。
    前景草にちゃんとライトが当たるかどうかは気にしますよね。それと同じで水流がちゃんと当たったほうが元気に茂ります。
    上下の動きは、水温を均一にする、水面の酸素の取り込み、底床内に水を...同時に酸素を入れる、底生微生物の活動を活発にする...ことにもつながります。
  • 水草だけでなく黒ヒゲを始めとして、スポット状や粉状の緑藻など大抵のコケも水流が大好きです。例えば前景の水流が当たるところに黒ヒゲが酷く出てきたら、しばらく向きを少し上向きに変える...なんてことが簡単に出切るようにしておきましょう。
    アオミドロやケバケバした緑藻藍藻などは水流が苦手です。強い水流を当てると消えていくこともあります。
  • 一度キチンと水流のデザインをしても水草が茂ってくると水回りが悪くなるところも出てきます。水流の回復も意識してトリミングを行いましょう。
  • 水流のデザインをする時に、強い水流を使うとどうしても水流があたって急減速するところが出てきます。そういった場所には特別ゴミが溜まりやすくなるので、掃除がしにくくなるような水草を植えたり、根本の汚れを特に嫌うような水草(ex.ミズハコベ...)を植えないようにしましょう。

 

水流の向きは、エーハイムのフレキシブル排水口を排水パイプの先に付けるのがやりやすいですよ。
私は今では色が気に入らなくて自作のものに切り替えてしまっていますが、機能的にはフレキシブル排水口が一番だと思っています。

水流のチェック

 

水槽の中では、意外と複雑に水が動きます。

実際にどう動いているかはチェックしてみたほうが良いです。

チェックして過去のその辺りの水草の成長を思い返してみると「なるほど〜!」って思うことがけっこうあると思いますよ。

成長度合いやグリーンロタラが枝垂れる方向とか。

 

これは私がずっと使っている水流チェックの道具ですけど、割り箸の先にすごく細い繊維の束をつけただけのものですね。

ちなみに先の繊維は本の栞の紐をほぐしたものです。

これが丁度いいんですよ。乱流が出来ているところとかその様子までよく分かります。

 

ちなみにどうでもよいことですが、こういう色の繊維を使うとちょっとしたルアーになってしまうようで、ヒラヒラ動く繊維の先にグローライトテトラとかが寄ってきて齧ったりします。

 

こんなもの使わなくても、水草があげる気泡のあがり方とか、魚の泳ぎ方や寝ている方向とか見ればだいたいは分かりますけどね。

 

でも丁寧に見てみると、1センチ高さが違うと、下は右に流れているけど、上は左に流れているなんてところもけっこう見つかるんですよ。

 

水流を弱めたい場合

例えば、グッピーのような特別水流に弱い魚を飼っていて、あるいはニムファ類などのような水流が苦手な水草をメインにする時に、循環水量は維持したいけど、流速を落としたいという時は、
ADAのリリィパイプ、エーハイムのナチュラルフローパイプ、GEXの拡散吐出口...のような排出口の流路経を急速に広げることで減速するものやシャワーパイプの向きを工夫して使うことになりますね。

 

もちろん排水口の前に水草を置くなどして減速させることもありですけど、流速は落としても全体の水の回りは悪くはしたくないわけです。この点から言うと減速させるだけじゃなくて水が回る力...水流のトルクまで落としちゃうようなやり方...シャワーパイプを後ろのガラス面に当てるとか、フィルターのタップを絞るとか...は、あまり良くないですよね。

流速は落としていても、あくまでも水が全体にしっかり回っていることが大事です。

この点でやはり、リリィパイプやナチュラルフローパイプなどが良いですよね。

大河が、平野、さらに海に出る時に、断面積あたりの流量は減っているどころか上流部よりも増えているのに流速は大きく落ちているように、急速に流路の断面積を増やすことで流速を落とすしくみが一番です。

ほんの少しだけ流速が落ちれば良いという場合は、排水用のパイプを一段経が太いものにするだけでも充分だったりもします。

 

また上下の水の動きが大事なのは、流速を落とした場合も同じです。

うちの子のグッピーが入っている40cm水槽では、排水パイプを延長して、排水口を割と底に近い方に置いています。

こうすることで、底の水がよく動きますし、グッピーが本来最も好きな泳層である表層近くが激しく動くということもないようになっています。

...もちろん水槽のグッピーはあらゆるところを泳ぎますけどね。

あくまでも最も好きな泳層が表層ということで。

 

このやり方の最大の欠点は、排水口の前の水草の茂り具合に気を配っておかないと...気がついたら排水口の前に水草ボーボーとかってことになると、水の回りがいっきに悪くなっちゃうっていうことですね。

 

なんにしても、強い...速い流れの水流を使えない場合は、あまり水草が密に茂る状態や複雑な地形は避けたほうが良いですね。

水草のような水の流れの抵抗になるようなものが多くなくて地形が平坦なら、水流は弱くても止水域なんて出来やしないですから。

底床内の水の動き

底床内の通水性を確保して嫌気化を避ける事は、健全な根の発達・底床内微生物の活性化、硫化水素の発生を避けるなどの点で重要です。

畑や水田も耕して空気を入れると復活するし、芝生も土が硬くなって弱ってきたら空気穴を沢山地面に開けてやると元気になりますよね。

 

これには幾つかの考え方があります。

  • パミス(軽石)を一番底にひくことでソイルの粒が崩れて出来た粉で底床内が詰まっていくことを防ぐ。
    ...ソイルを比較的厚く敷きたい場合。水草水槽だと大抵はそうですよね。
  • 出来るだけ大粒で固めのソイルを使う。パウダータイプはどうしても必要な時以外に使用しない。
  • 根張りの良い水草を植える
    水の動きをつくるわけではないですけど、根は底床内に酸素を供給してくれます。
    ブリクサやサジタリアなどの根張りの良い水草は底床内環境維持にも役立つわけです。
  • ソイルを薄く敷く。...水草水槽だと栄養がスグに切れるし、根の行き場もなくなるので、あまりこの選択肢はないでしょうけど。
  • ケーブルヒーターを底床内に入れる。
    私はやったことはないしメンテナンスとかいろいろと不安もあるけれど、リクツとしては底床内に水の動きをつくれますね。底床内が温度変化すれば。
  • 底面フィルターを使う。
    これ以上に底床内の水の動きをつくれるものはないしリクツの上では理想的だけど、これもソイルで使う気にはとてもなれないですね。メインのフィルターとしては考えないで使うのなら大有りかもしれませんが。
  • 底床供給器を底床に仕込む。
  • 面倒なことはあまり考えずに、ソイルが崩れて詰まってきたらさっさとリセットする。
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